キャフェは、カフェのことですよね。café と書いて「カフェ」。また、「キャフェ」と発音することもあるようです。
「日課をおへて後は、學校の向ひなる、「カツフエエ、ミネルワ」といふ店に入りて、珈琲のみ、酒くみかはしなどして………」
森 鷗外が、明治二十三年に発表した『うたかたの記』に、そのような一節が出てきます。森 鷗外は「カツフエエ、ミネルワ」と書いているのですが。
もし、これを今様に解釈するなら、「カフェ・ミネルヴァ」ではないでしょうか。
森
鷗外研究家の間では、「カフェ・ミネルヴァ」は有名な店で、多くの人たちがその店の痕跡を調査もしているのです。結論だけを申し上げますと、今は「カフェ・ミネルヴァ」は消えているんだそうですが。
ブルガリアには、「ウィーン」という名前のカフェがあるという。『カフェ・ヨーロッパ』を読んで教えられたことですが。1996年に、スラベンカ・ドラクリッチが発表した物語。
「それでも、このカフェのいいところは、紅茶をたのむと、レース模様の小型の紙ナプキンに乗せられた小さなビスケットがついてくること。」
そんなふうに書いてあります。もっともブルガリアには二軒の「ウィーン」があるんだそうですが。
カフェが出てくる回想録に、『娘時代』があります。1958年に、シモーヌ・ド・ボーヴォワールが発表した物語。日本語訳は、朝吹登水子。
「キャフェ・フロール ー 当時は町内の小さなキャフェにすぎなかった ー でレモネードを飲んでから、私たちは………」
もちろん、ボーヴォワールが少女の頃の話なんですが。この『娘時代』には何度も何度もカフェが出てきます。それを朝吹登水子は「キャフェ」と訳しているのです。朝吹登水子の耳には「キャフェ」と聴こえていたのでしょう。
また、『娘時代』にはこんな一節も出てきます。
「《貴女はキッドの手袋をはめたまま人生を歩もうってわけですか》」
これは「ハンツ・ミラー」の言葉として。たぶん貴婦人の人生という意味なのでしょう。
「キッド」kid は、子山羊の革のこと。薄く、しなやかで、伸縮性に富んでいます。
どなたか純白のキッドでチョッキを仕立てて頂けませんでしょうか。