エジプトとエポーレット

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エジプトは、歴史の古い国ですよね。紀元前三千年頃から文明があったという。これは重荷のナイル川との関係でしょう。
文明の源は川にあり、ということなのでしょうか。当時の川は人を運び、物を運び、文化を運んだに違いありません。

大正八年に、エジプトを旅した作家に、徳冨蘆花がいます。妻の「愛子」を伴って。この時の旅の記録は、『埃及』に収められています。

「カアキイ服の肩から黒革を斜めにつるした六尺近い英利吉軍人が好い姿勢をして、ゲエトル巻きの細脛を踏張つて行く。」

徳冨蘆花は、街の様子をそんなふうに書いています。当時のエジプトには英国人が多くいたようですね。

「それから、其隣の仕立屋に寄って、妻の夏服の出来合いを買った。」

そんな文章も出てきます。「其隣」とは、徳冨蘆花がガイドブックを買った本屋のこと。「夏服」とはモワレふうの生地で、すぐにサイズを直してくれたとも書いてあります。

エジプトが出てくる小説に、『田舎医者』があります。
1833年に、オノレ・ド・バルザックが発表した長篇。

「エジプトの南北両地区からアラビア、さらにはいまはもう存在しない昔のいろいろな王国の首府まで席巻したものだ。」

もちろん、ナポレオン・ボナパルトの遠征の話なのですが。
また、バルザックの『田舎医者』には、こんな描写も出てきます。

「ずいぶんと苦労したらしいのに、羅紗の肩章しかつけたことがないとのことです。」

これはもとナポレオンの部下だった若者について。
ここでの「肩章」は、エポーレット epaulet のことかと思われます。肩線を張らせるにも都合のよろしい細部デザインです。
どなたかエポーレット付きの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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