クリイムとクラック

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クリイムは、ホイップ・クリイムのことですよね。ミルクをかき混ぜていますと、自然にクリイムがあらわれる仕組みになっています。
コーヒーにもクリイムはお似合いでしょう。コーヒーに蓋をしてくれて、コーヒー自体は冷めることがありません。寒い冬のウィーンが生んだ名案なのでしょうね。
パフェにもクリイムはつきものです。単なるバナナが、単なるパイナップルが、クリイムが添えてあるだけで、貴公子に思えてくるから不思議ですね。
ドイツ菓子のひとつに、バームクーヘンがあります。バームクーヘンを皿に移して。白いクリイムのドレスを着ていただくと、何回でもおかわりがしたくなってきます。

「夏は氷盤に苺を盛つて、旨き血を、クリームの白きなかに溶かし込む所にある。」

夏目漱石が、明治四十年に書いた小説『虞美人草』に、そんな一節が出てきます。漱石はたぶん苺にクリイムをかけて召しあがるのが、お好きだったのでしょう。
『虞美人草』の題名は偶然のことから生まれたんだそうですね。
明治四十年の五月。漱石は小宮豊隆と一緒に、森川町へ。ここで鉢植えを買って。花の名前を問う。
「へえ、虞美人草でございます」
これで『虞美人草』になったと伝えられています。

クリイムが出てくる小説に、『現代史の裏面』があります。1842年に、バルザックが書いた物語。

「ああ、それからあのお爺さんが、奥さんのたべるクリームと小型パンを買いに行きます。」

これは「ヴォーチエ未亡人の言葉として。
また、『現代史の裏面』には、こんな描写も出てきます。

「畳帽子というのは、当時、頭にのっけるかわりに平たくつぶして小脇にかかえこむのが習わしの半円形のフェルト帽ですが………」

「畳帽子」。原文では「クラック」clac になっています。つまり「ジビュス」のこと。「オペラ・ハット」のこと。
ジビュスは畳んだり、開いたりする時、パチと音がするので、「クラック」。つまり擬音から来ているのです。
どなたか現代版のクラックを作って頂けませんでしょうか。

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