カフェとカンカン帽

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

カフェは、主にコーヒーを飲む場所ですよね。カフェは日本の喫茶店。ほんとうはそんなふうにも言いたいのですが。喫茶店は喫茶店、カフェはカフェ。似て非なるものとは、このことであります。
カフェの本場はやはりパリなんでしょうか。パリのカフェの「空気」は、どうも輸出が難しいようです。
パリのカフェでは、たいていのことができます。本を読んだり、手紙を書いたり。でも、なんにもしない姿が様になるのも、パリのカフェなんですね。「大人の国」の余裕とでも言えば良いのかも知れませんが。

「かの女をモンパルナスのキャフェ・ド・ラ・クーポールに導いて入つたむす子は、ダブル釦の上着のポケットから手を出し、ちょっと指してさういつた。」

1937年に、岡本かの子が発表した『母子叙情』に、そのような一節が出てきます。
岡本かの子は「キャフェ」と書いているのですが。また、ここでの「むす子」とは、若き日の岡本太郎ではないかと思われます。
「むす子」は、「クーポール」のいつもの席に、先客が座っていることを、残念がっている場面なんですね。

「モンパルナスのメトロ近くの安ホテルを出ると、角にあるカフェ・ル・ドームの椅子に座り、ワインとサンドイッチを頼み、ぼけっと通りを眺めていた。」

画家の司 修は、『バルザック像』という随筆の中に、そのように書いています。

カフェが出てくる小説に、『鉄橋』があります。1974年に、辻 邦生が発表した短篇。

「黒いゴムの合羽を着た男たちが仕事を終ってカフェに入ってきた。」

作家の辻 邦生は一時期パリに住んでいたこともあって、カフェが似合う男でもあったでしょう。
辻 邦生は同じ年に、『帰ってきた人』をも書いています。この中に。

「男は赤いリボンのついたカンカン帽を両手で持ち、身体を右に傾げた。衿の高いカラーをしているので、ひどく窮屈そうに見えた。」

これがアメリカから、「帰ってきた人」なんですね。
辻 邦生は「カンカン帽」と書いています。フランスなら、「カノティエ」でしょうか。もともとのハット・バンドは、クラブや学校の縞柄を巻いたものです。
どなたかスクール・カラーのハット・バンドをあしらったカンカン帽を作って頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone