肩と絣

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肩は、腕の付け根のことですよね。英語なら、ショルダーでしょうか。
たとえば、「肩をそびやかす」などと、人の形容にも使われることがあります。「肩で風切る」なども、そのひとつでしょう。

「みんな滑稽なもんだ。洒落だとか、謎だとかね。寝てゐて読むには丁度手頃で好いよ肩が凝らなくつてね。」

夏目漱石の『明暗』にそんな一節が出てきます。これは「お延」が持ってきた本について。たしかに「肩が凝る」も、形容のひとつですね。

🎶 肩のふるえを ぬくもりを 忘れられずに いるのなら

昭和歌謡曲『好きだった』に、そんな歌詞がありましたね。「和田 弘とマヒナスターズ」が歌っていた記憶があります。肩は感情表現の場所でもあるのでしょう。

これも一例ですが、ナチュラル・ショルダー。スーツに於ける肩線は服の出発点です。すべては「肩」で決まります。服でもっとも大切な部分が、「肩」なのです。

肩が出てくる短篇に『有樂門』があります。森 鷗外が明治四十年に発表した小説。

「………唐桟の羽織の肩先を押されて、たじろぎ降りぬ。」

これは電車から降りる職人風の男について。場所は今の日比谷あたり。明治の頃には、市電が走っていて、「有樂門」という駅があったのでしょう。そこで乗り降りする人を細かく描いた名作です。当時の人たちの着物の様子がよく分かります。
森 鷗外が明治三十年に発表した短篇に『そめちがへ』があります。この中に。

「………梯を上り来る清二郎が拵は細上布の帷子、ひんなりとした男振にて綛の藍に引くつ立つて見ゆる色の白さ………」。

清二郎はもちろん絣の着物を着ているわけです。
どなたか絣でスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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