ショオ・ウインドオとジビュス

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ショオ・ウインドオは、飾窓のことですよね。なにかの店があれば、たいていはショオ・ウインドオがあります。
show window と書いて「ショオ・ウインドオ」と訓みます。英語としては、1826年頃から用いられている言葉なんだそうです。
直訳すれば、「見せるための窓」でしょうか。店の中に入らなくても、ショオ・ウインドオを見ればおよその見当がつきます。その意味では便利な窓でしょう。
日本でのショオ・ウインドオは、「和光」。銀座四丁目の角の和光。いつも凝った飾窓になっています。
巴里では、「エルメス」でしょうか。第一、お金のかけ方が違うように思えてなりません。
ショオ・ウインドオから輸入がはじまったものに、「アヴォン」があります。1950年代のこと。当時、イタリアの最高級ニット・メイカーだったAvon。その頃、巴里のフォーブル・サントノーレを歩いていた桃田有三が偶然にショオ・ウインドオを見て。

店々の飾窓に、さまざまの光沢と陰影とが入り乱れて息づかひ深く霧が愈ふりそそぐ。

北原白秋が、大正二年に発表した詩集『桐の花』に、そのように詠まれています北原白秋は「飾窓」と書いて「シヤウウインドウ」のルビを添えているのですが。

大正五年に、夏目漱石が発表した小説『明暗』にも。

「所々のシヨーヰンドーには、一概に場末ものとして馬鹿に出来ないやうな品が綺麗に飾り立てられてゐた。」

そんな一節が出てきます。また、『明暗』には、靴の話も出てきます。

「………真事のために、望み通りキツドの編上を買つて遣りたい気がした。」

これは「津田」の想いとして。真事は、少年の名前。

ショオ・ウインドオが出てくる小説に、『使者たち』があります。1900年頃に、ヘンリー・ジェイムズが書いた物語。

「………人生というものを、商品でいっぱいになったショー・ウインドーとでも思っているのだろうか。」

これは「バラス嬢」への感想として。また、『使者たち』には、こんな描写も出てきます。

「チャドがそれまで神経質な様子を見せたのは、彼がふちの広いオペラ・ハットを何度も脱いだりかぶったりした時だけだった。」

「オペラ・ハット」は、平たく畳める帽子のことです。「ジビュス」とも。十九世紀のはじめ、巴里の帽子屋、アントワーヌ・ジビュスが考案したので、その名前があります。
「ジビュス」gibus 。
どなたか現代版のジビュスを作って頂けませんでしょうか。

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