テーブルとティロリアン・ハット

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テーブルは、卓のことですよね。「卓話」なんて言葉もあります。テーブルを前にして話すので、「卓話」なんでしょう。
「テーブル」table はラテン語の「ターブラ」tabula から来ているんだそうですが。「板」の意味があったという。
英語のtableが出てくるたびに「テイブル」と翻訳されたお方が、菊池 光。菊池 光なりのお考えがあったのでしょう。
「テーブル」はおしゃれ語でもありまして。ダイヤなどの宝石の表面を平らにカットされた部分を、「テーブル」と呼びます。

「………長いテーブルの周囲に並んで一寸神田の西洋料理屋位な格だ。」

夏目漱石の『坊っちゃん』に、そのような文章が出てきます。これは学校の会議室での様子として。
夏目漱石の弟子であったのが、森田草平。森田草平が明治四十二年に発表した小説に、『煤煙』があります。この中に。

「楊枝を咥えながら茶の間を覗くと、小母さんは餉台の上に小皿や茶碗を伏せて………」

これは「要吉」が茶の間を見ている場面として。森田草平は、「餉台」と書いて、「ちやぶだい」のルビを添えているのですが。
ちゃぶ台もまた、卓のひとつなんでしょう。ちゃぶ台で思い出すのが、向田邦子。向田邦子の『寺内寛太郎一家』では、ちゃぶ台で食事をしていましたから。
『寺内寛太郎一家』のもうひとつの主人公はちゃぶ台だったのではないでしょうか。ちゃぶ台の「ちゃぶ」は中国語から出ているとの説もあるのですが。
それはともかく、「ちゃぶ台」が、昭和を象徴するテーブルであるのは、間違いないでしょう。

テーブルが出てくる小説に、『鳩の翼』があります。1902年に、ヘンリー・ジェイムズが書いた名作。

「街通りや、部屋や、テーブル掛けや、センターピースの………」

そういえば、テーブルにセンターピースを置くこともありますね。
また、『鳩の翼』には、こんな描写も出てきます。

「鷲の羽飾りにもかかわらず、なぜか非常に家庭的で「立派な」チロル風のフェルト帽を、彼女は相変わらず真っ直ぐにしっかりと、かぶっていた。」

これは「ストリンガム夫人」の帽子として。おそらく「ティロリアン・ハット」tirolian hat のことかと思われます。
十九世紀までのティロリアン・ハットは、今よりもっと、ブリム幅が広かったようですね。
どなたか十九世紀ふうのティロリアン・ハットを作って頂けませんでしょうか。

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