アラザシとアノラック

アザラシは、海に棲む動物ですよね。英語なら「シーオッター」でしょうか。
アザラシの革も当然、水に強い。それで昔の北方民族はアザラシの革でモカシンなどを作ったとのことです。
日本でも、スキー板の裏にアザラシの革を貼ることがあったという。

「あらざしはどうしても欲しいですなあ。」とか、この間から、わいわい相談しているスキーのプランの続きなのだ。」

昭和十年に、豊田三郎が発表した小説『弔花』に、そのような一節が出てきます。もちろん、スキー板の裏に貼って、滑り止めにするために。
日本でもアイヌでは昔からアザラシ漁が行われていたんだそうですね。アザラシはアイヌの言葉で、「トウカリ」と言うらしい。
アザラシは流氷と関係があって。主に流氷に乗ってやって来る。そのために襟裳岬よりも北に現れることが多いとのこと。
北海道には、アゴヒゲアザラシ、クラカアザラシ、フィリアザラシ、ゼニダクアザラシ、ゴマクアザラシの五種が棲んでいるという。
アイヌでは、アザラシの革を靴や鞄の材料にし、肉は余すことなく食料にするんだとか。
アイヌがアザラシを得るには、神に祈りを捧げてから。また、アザラシ漁には、「沖言葉」を遣う。流氷のことは「コルン」ではなくて、「ソッキ」と言い換える。神の怒りを怖れて。
海上にアザラシを見つけたなら、風下からモリを持って近づく。このモリは「マレプ」とか、「キテ」と呼ばれるアイヌ独特のモリ。一度刺さると決して抜けることがない工夫がされていて。
キテには長い柄が付いていて、この柄は「シウリ」と呼ばれる木で作ることになっています。
アザラシが出てくる紀行文に、『オホーツク街道』があります。司馬遼太郎が、1992年に発表した随筆。

「アザラシの毛皮は、十二、三世紀の甲冑の胴(腹巻)にもつかわれ、くらなどにもつかわれた。これほど多様されていたのに、この毛皮が、どこからきたかについては、記録がない。」

司馬遼太郎はそのように書いてあります。また、『オホーツク街道』には、アノラックの話も出てきます。

「こういうフードつきの防寒用ジャケットのことを現代語でアノラック(anorak)という。ノルウエー語がイヌイット語(エスキモー語)からの借用して世界語になった。」

アノラックはもともと一枚毛皮の上着。毛皮なので、温かい。それに前開き部分を極端に省略。前からの風を防ぐために。つまり頭からかぶって着る式の上着なのです。
どなたかアザラシのアノラックを作って頂けませんでしょうか。