ジェイムズとシェットランド

ジェイムズは、人の名前にもありますよね。James と書いて「ジェイムズ」と訓みます。
聖書に出てくる「ヤコブ」とも関係があるんだとか。たぶん古い時代からの名前なんでしょうね。
たとえば、ジェイムズ・ボンドだとか。もちろんイアン・フレミング作の「007シリーズ」の秘密諜報部員という設定になっています。
1960年代の日本でも「ボンド・ルック」が話題になったものです。これは主に映画からの影響だったのですが。

「彼は数々の障害に出会うことがあっても、抵抗とか疲れは知らないのである。彼は不死身であるばかりではなく、擦り切れもしないし、汚れもしない。」

ここに「彼」とあるのは、ジェイムズ・ボンドのこと。1965年、フランスの雑誌の問いに答えて、ロラン・バルトはそのように返答しています。『ジェイムズ・ボンドに関する質問への回答』と題する文章の中で。
これはフランスの雑誌「ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」の質問に答えたものです。
うーん、ロラン・バルトに、ジェイムズ・ボンドのこと聞いてみたい。その編集部の気持、解りますよね。
たしかジェイムズ・ボンドはスコットランド系ではなかったでしょうか。スコットランドにももちろんジェイムズの名前はあるのでしょう。
これもまた、一例ですが。ワット。ジェイムズ・ワット。今も電気量の単位に「ワット」があります。あのワットの元になったお方が、ジェイムズ・ワットなのですね。
ジェイムズ・ワットは1736年1月10日。スコットランド中部のレンフルーシャに生まれています。1774年には、新型蒸気機関を発明。このジェイムズ・ワットが発明した新型蒸気機関は、当時の織物機にも応用されたとのことです。
その後、1804年になって、初期の蒸気機関車が誕生しています。もちろん、スティーム・ロコモーティヴ。この頭文字から「SL」と呼ばれるわけですね。
実用的な蒸気機関車は1820年代に、ジョージ・スティーヴンソンが完成させたのは、ご存じの通り。
その後の蒸気機関車の発展ぶりは驚くばかりです。
蒸気機関車の中でゆっくり食事ができるように。言うまでもなく食堂車の登場。1860年代のアメリカに於いてのことです。
ジョージ・M・プルマンの「デルモニコ」が早い。ジョージ・M・プルマンは、1866年5月19日の土曜日に、試食会を開いています。
チキン・サラダやサンドイッチ、イチゴのクリイム添え。ワインも、シャトオ・マルゴオに、シャトオ・ラフィット。シャンパンもマム、モエ・エ・シャンドンなどが用意されていたという。

ジェイムズ・ワットが出てくる随筆に、『九つの空』があります。團伊玖磨が、1971年に発表した紀行文。この中で、團伊玖磨はスコットランドにも旅しているのです。

「ジェイムス・ワットがボールトンと協力して現代的な蒸気機関の発明に成功したのが一七七四年。」

また、團伊玖磨の『九つの空』には、こんな文章も出てきます。

「頭と脚先だけが黒いスコットランドの羊とは異なって全身が白いシェットランド・シープの群れと」

これはレイウイックでの見聞として。
シェットランド種の羊毛は優秀だと考えられています。ここからはシェットランド・ヤーンがひかれ、やがてシェットランド・ウールとなり、シェットランド・トゥイードにもなるわけです。ややキャメルにも似た質感があるとも言われています。
どなたかシェットランド・トゥイードのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。