カレンダーとカポート

カレンダーは、暦のことですよね。
何月何日は、何曜日なのか。これは暦を見るとすぐに分かります。
🎶 カレンダーガール
1961年に、ニール・セダカが歌った曲に、『カレンダーガール』があったような記憶があります。毎日でも逢いたい女の子。たぶんそんな意味なのでしょう。
暦に旧暦と新暦とがあるのは、ご存じの通り。
江戸時代以前に使っていたのが、旧暦。今使っているのが、新暦。
たとえば、「如月」(きさらず)という言葉があります。これは二月のこと。
一説に、「衣更着」と関係があるのでは、とも言われています。いずれにしても旧暦での「二月」の意味だったのですね。

「勤め子の唐織を着始めしは、これを手本にイロホ形・暦小紋袖をあらそひける」と、平川吉六も、あつて過ぎたるむかしを思ひ出させり。」

井原西鶴が貞享四年に発表した『男色大鑑』に、そのような一節が出てきます。
ここでの「平川吉六」は、その時代に人気のあった歌舞伎役者。また、「イロホ形」はいろはを絵にした柄のこと。同じく「暦小紋」は、暦の絵を着物の柄を写したもの。西鶴の時代には凝った柄がたくさんあったのでしょう。

そういえば英語の「カレンダー」calender も、おしゃれと無関係ではありません。
カレンダーはふつう、calendar と書きますが。もうひとつのcalender があるのです。これは「生地の艶出し加工」の意味になります。
生地を一度織りあげて、ローラーにかける。と、光沢が生まれる。この工程を、「カレンダー」。

今、私たちが使っているのが、「グレゴリオ暦」であるのは、言うまでもありません。
グレゴリオ暦の前には、「ユリウス暦」が用いられていたのですね。
古代ロオマの英雄、ガイウス・ユリウス・カエサルが定めた暦なので、「ユリウス暦」と呼ばれたわけですね。
今に七月を「ジュライ」というのは、カエサルの誕生月が七月だったから。ユリウスを英語訓みにして「ジュライ」となったものです。
カエサルは紀元前100年の七月生まれだと、信じられていたので。
日本が今の新暦を取り入れたのは、明治五年のことです。
明治五年十一月九日に、発表。明治五年十二月三日を、明治六年一月一日と変えたのであります。
これは大隈重信の決定によるもの。突然のことでありました。あまりに突然なので、明治新政府は、新しい暦の発行を自由に任せたほど。
なぜ、突然だったのか。これは閏年と関係があったのです。
旧暦なら閏年の関係で、十三回分の給料を払わなくてはならない。それが新暦なら、十二回分で収まる。
そんな事情から、新暦採用を急いだものと思われます。

カレンダーが出てくる小説に、『モスカット一族』があります。アイザック・B・シンガーが、1945年に発表した長篇。

「壁にはカレンダーが掛けてあり、皇帝たち、狩猟家たち、将軍たち、オペラ歌手たちの絵が掛っていた。」

また、『モスカット一族』には、こんな描写も出てきます。

「長いカポーテを着たユダヤ人やその妻たちが公園に入り込まない番をし、香しい空気をちょっと吸ったできないようにしていた。」

「モスカット一族」はもちろんユダヤ系の家族なのですが。
ここでの「カポーテ」は、カポートcaporte のことかと思われます。
カポートは中世にはじまるフード付きの着丈の長い外套のこと。
また、十七世紀末からの「カポート」には、頭にフィットした婦人帽の意味もあります。もちろん外套のカポートのフードが変化したものです。
どなたかフード付きのカポートを仕立てて頂けませんでしょうか。