サフランはお高いものですよね。あらゆるスパイスの中で、もっとも高価かも。いや、グラム当たりで計算すると、すべての食材の中でもトップクラスでしょう。
サフランの学名は、「クロカス・サティウス」。あやめ科の植物なんですね。サフランの花のめしべは黄色くて、この中には「クロシン」という色素が。で、サフランのめしべを使うと、輝くばかりの黄金色に染まるわけです。
古代ギリシアではサフランでの黄金色は皇帝だけが着ることを許されたんだそうです。
今、皇帝でもない我われも時にサフランを口にすることがあります。たとえば、パエリヤ。パエリヤに少し、水で溶いたサフランを加えると、ゴールデン・カラーに。サフランあってこそのパエリヤでしょうね。
パエリヤ paella は両脇に把手のついた平鍋。この平鍋で最初から最初まで料理するから、パエリヤ。
もともとはスペイン、ヴァレンシアの狩人の料理だったとか。狩りに出る時平鍋と、米、オリーヴオイルさえ持って行けば。あとは狩りで得た獲物を入れると、栄養満点のご馳走が簡単にできたわけです。
そもそものパエリヤはいわば「山パエリヤ」として、はじまっているのでしょう。その後パエリヤは海辺にも伝えられて、ムール貝などを入れる「海パエリヤ」に。海のものも山のものも入れるのを、「パエリヤ・ミスト」と呼ぶんだとか。
パエリヤが出てくるミステリに、『殺人計画』が。イギリスの作家、ジュリアン・シモンンズが、1973年に発表した物語。
「前夜の夕食は肉、魚、米をたきこんだすばらしいパエーリャだった。」
どうしてパエリヤなのか。場所がスペイン、ヴァレンシアだから。ロンドンの製薬会社、会長がこの地の別荘に。また、こんな描写も。
「ジェフリー・パラディンは決して短くはない半ズボンをはき、趣味のいい花模様入りのシャツを着ていた。」
ジェフリー・パラディンは、イギリスの製薬会社の支配人という設定。もしかしてこの「半ズボン」、バーミューダ・ショーツではないでしょうか。
さて、バーミューダ・ショーツで、パエリヤと参りたいものですが……。