クリケットとクロシェット

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クリケットは、イギリスのスポーツですよね。クリケットは英国で生まれ、英国で育まれてきたスポーツ。イギリス人はたいていクリケットのあることを、誇りに思っています。
その意味では日本の相撲に似ているのかも知れませんね。英国でのクリケットは、ほとんど「国技」でもあるかのようです。と、同時に、クリケット競技に参加して、それが自然に思えるのが、英国人の証明でもあります。
クリケットの前に、「クリーグ」という球技があったらしい。1301年頃。後のエドワード二世が皇太子の時代に、「クリーグ」を行ったとの記録があって。これをも含めたなら、クリケットの歴史は想像以上に古いことになるでしょう。
クリケットが出てくる冒険小説に、『デヴィル・メイ・ケア』があります。英国の、セバスチャン・フォークスが、2008年に発表した物語。『デヴィル・メイ・ケア』は、ジェイムズ・ボンドのパロディ版でもあるですが。そのためもあってか、時代背景は、1967年におかれています。
『デヴィル・メイ・ケア』の中で、ボンドは「敵」とテニスの試合を。たしか『ゴールド・フィンガー』では、ゴルフをする場面がありました。それがここでは、テニスになっているわけですね。パロディのパロディたるゆえんでありましょう。
「敵」とテニス試合をしていて。「イッツ・ノット・クリケット」と言う。「クリケットではない」と。
テニスをしているのですから、たしかにクリケットではありません。そしてまた、「イッツ・ノット・クリケット」は、英国人がよく遣う言いまわしでもあって。「フェアではない」の意味になります。テニス試合でなにか不正があって、「イッツ・ノット・クリケット」と言うんは、シャレにもなっているのですね。
それはともかく。『007』のパロディですから当然、ボンドがニット・タイを結ぶ場面も出てきます。

「ネイビーブルーのウーステッドのスーツに、手織りの黒いネクタイをしめると…………」。

これはあるいは、ニット・タイなのかも知れませんが。また、別のところでも、ボンドがニット・タイを買う様子が出てきますから。
ジェイムズ・ボンドの好みは、「手編み」のニット・タイ。極上の絹糸を、鉤針で編んで仕上げる。これを、「クロシェット」といいます。あるいは、「クロシェッテッド・ニット」とも。それを「手編みのニット・タイ」と呼ぶわけですね。
上質のクロシェットによるニット・タイを掌で握ると、キュッと鳴ります。これが、手編みのしるし。ジェイムズ・ボンドの結ぶニット・タイは、「絹鳴り」の音がするネクタイなのです。

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