コックニーとコオデュロイ

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コックニーは、倫敦っ子の言葉ですよね。むかしの江戸っ子に江戸弁があったように、倫敦っ子弁ともいうべきでしょうか。
もし、今、コックニーを聴きたいなら、映画『マイ・フェア・レディ』を観るのが、てっとり早いと思います。『マイ・フェア・レディ』の、最初の場面でイライザがしゃべる言葉、あれがまさにコックニーなのです。コックニーは上流階級の人間にとっては、必ずしも上品な言葉ではないので、それをなんとかしようという賭けから、物語がはじまるんでしたね。
コックニーの歴史もたいへん古くて。ディケンズの時代にも、すでに用いられています。倫敦の下町言葉。もう少し具体的に申しますと、「セント・マリイ・レ・ボウ教会」の鐘の音が聞こえる範囲に住んでる人たちと、限定されていたらしい。
コックニーの特徴のひとつに、「H」の男が抜けること。その意味ではちょっとフランス語にも似ているのかも知れません。
たとえば、ハングリーというつまりが、「アングリー」。Hの音がどこかに行ってしまう。
コックニーでは、「フィング」と発音。これ、th ing のこと。シングとはならないで、「フィング」。th の音が、f の音に変換するんですね。たとえば、ファーザーとなるべきところが、「ファーヴァー」になったり。
コックニーが出てくるミステリに、『ケンブリッジ・シックス』があります。2011年に、チャールズ・カミングが発表した物語。

「 「これ、落としたぜ」 男がひどいコックニー訛りで、ぼそりといった。」

ある人物がロンドンの街でメモを落として。それを拾った男の科白なんですね。また、『ケンブリッジ・シックス』には、こんな描写も出てきます。

「コーデュロイ・ジャケットを着て革のかばんを肩にかけたこの身長六フィートの男は………………。」

この「コーデュロイ」は、はたして何色だったのか。もしかして、ダーク・ブルー。オフ・ホワイト?そんな勝手な想像も愉しいものですが。
そうそう、今度コックニーを聴きに行くなら、コオデュロイの上着がお似合いでしょうか。

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