アラスと麻スーツ

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アラスは、北フランスの地名ですよね。Arras
と書いて「アラス」と訓みます。このアラスもおしゃれ語と無関係ではありません。「アラス・レエス」が有名ですから。
アラス・レエスは上質綿糸を使ったボビン・レエスの一種。昔の貴婦人はよく、アラス・レエスの肩掛けを使ったものであります。
このアラス・レエスとよく似ているのが、リイル・レエス。リイル Listle
もまた北フランスの町。場所が近いのですから、レエスが似ているのも不思議ではないでしょう。
リイルは、フランスでの呼び方。イギリス式には、「ライル」となります。ひと時代前のイギリスでは、ライルは高級綿糸の別名でもあったものです。
ことに「ライル」の靴下。ひと言「ライル」といえば、一目おかれたものであります。
ライルが出てくる小説に、『戦う操縦士』があります。1942年に、フランスの作家、サン=テグジュペリが発表した物語。

「しかし、アラスは都市ではない。アラスは、ブルーの夕空を背景にした赤い燈芯以外のなにものでもない。」

また、サン=テグジュペリは、平和な時代のアラスを思い出して、こうも書いています。

「………艶やかな胡桃材の嵌め木の床、戸棚のなかにはみごとなリンネル類………」

1944年7月31日の朝早く、サン=テグジュペリは、グルノーブルをめざして飛び立った。写真撮影のために。実はこの日の飛行がサン=テグジュペリの最後の飛行となる予定だったのですが。それがほんとうに最期の飛行となったのです。

アラスが出てくるミステリに、『贖罪』があります。2001年に、イギリスの作家、イアン・マキューアンが発表した物語。

「アラスをめぐって大戦闘が行われたのだが、誰が守っているのか、どっちが勝っているのかさっぱり分からなかった。」

また、『贖罪』には、こんな描写も出てきます。

「………男たちのクリーム色のリネンスーツはほんのわずかに色合いが異なり………」

麻は自然色であることが多く、微妙に表面感が違ってくるものです。
麻のプリーツと綿のプリーツは、まったく違います。折目も皺も潔いのです。男は潔さの象徴として麻を好むのでしょう。
どなたか完璧な麻スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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