エチケットとマント

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エチケットからははるかに遠い私ではありますが。
エチケット etiquette は、ヴェルサイユ宮殿にはじまっているんですってね。
ルイ十四世の時代に。宮殿の庭師として、あるスコットランド人が雇われる。その庭師は庭園を整えるのに巧みであった。
その美しく整えられた庭を踏み乱す人がいる。そこで、小さな立て札を出した。「ここからは入ってはいけませんよ」と。この「立て札」から、今のエチケットの意味が生まれたんだそうですね。たぶんフランス人の考える庭と、スコットランド人の考える庭とが少し違っていたのでしょう。
エチケットといえば。詩人の草野心平が、『居酒屋でのエチケット』という随筆を書いています。
昔むかし。草野心平は箱根富士屋ホテルでの宴席に出たことがあるらしい。たまたま草野心平の前の席に。Tという中国人がいらした。
食事中。T氏のフォークから肉片が外れて、白いテーブルクロスの上に。と、T氏はなにごともなかったように、静かにフォークで刺して口に運んだという。

「右コ左ベンはなかった。私はきれいだなあと思った。」

そんなふうに書いています。
その草野心平が愛飲したのが、「シンフォニー」。シンフォニーはもちろん、草野心平の命名。「シンフォニー」とは。焼酎に、桃の種、りんごの皮などを入れる。と、渾然一体となって。まるでシンフォニーのような味になるんだとか。
ある日ある時。詩人の新藤涼子が長いマントを羽織っていたことがあった。そしてたまたま草野心平に出会う。と、草野心平も、マント。旧制高校時代の、紺のマントを。その時の草野心平の言葉。

「ぼくのこのマントはスタイル、きみのそのマントはファッション。」

これもまた、草野心平流のエチケットだったんでしょうね。

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