サンドイッチとスカーフ

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サンドイッチはよく食べますよね。なにかしらパンがあって。なにかしら挟むための具があれば。たちまち、サンドイッチになってしまう。
サンドイッチにも星の数ほどの種類があるんでしょうね。その中にあってやや特別なのが、キュウリのサンドイッチ。キューカンバ・サンドイッチ。
その昔、英国上流階級ではキューカンバ・サンドイッチが、不可欠だった。午後のティ・タイムに、キュウリのサンドイッチはなくてはならないものだった。お茶といえば、サンドイッチ。サンドイッチといえば、キュウリの。
『まじめが肝心』にも、そのことが出てきますよね。もちろん、オスカー・ワイルドの書いた喜劇。この中に。

「こりゃどうした! レイン! どうして胡瓜サンドイッチがないんだ! 特別に注文しておいたんだぞ!」

これは主人のアルジャーノが召使いのレインに対しての、科白。オーガスタ叔母さんをお茶の時間にお招きしたのに、キュウリのサンドイッチがない。それで焦っている場面。実は、アルジャーノ自身が無意識のうちに、ぜんぶ食べてしまっていたからなんですね。まあ、それくらいに、お茶にはキュウリのサンドイッチが欠かせないものだった。
オスカー・ワイルドが『まじめが肝心』を仕上げたのは、1894年のこと。初演は、1895年2月14日。ロンドンの「セント・ジェイムズ劇場」で。この夜、ロンドンは稀に見る猛吹雪。にもかかわらず、セント・ジェイムズ劇場は、『まじめが肝心』を観る客たちの馬車で埋めつくされたという。
キュウリのサンドイッチは、薄いほど良いとされる。パンも、薄く、キュウリも薄く。キュウリは「木の葉のように薄く」が理想なんだとか。
キュウリのサンドイッチが出てくるミステリに、『告発者』が。1992年に、ジョン・モーティマーが発表した物語。

「ダンスターは半分キュウリ・サンドイッチを頬ばりながら私の父に言った。」

ディック・ダンスターは、脚本家という設定。また、こんな描写も。

「古いツイードの上着持ってたわよね。革の肘当てがあって、きみにはもう小さくなってきたやつ。あれがいいわ。それから首にコレッジ・スカーフをぐるぐるっと巻いてちょうだい。」

これは、演出家のナン・ソログッドの指示。テレビ局の、フィリップ・ブログマイアに対して。
カレッジ・スカーフというのがあるんでしょうね。
なにかスカーフを巻いて。美味しいサンドイッチを食べに行くとしましょうか。

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