コーヒーは、美味しいものですよね。コーヒーも、紅茶も、そしてお茶も、結局は嗜好品であります。つまり、人の好みに大きく左右されるところが大きいものなんでしょう。
たとえば、コーヒー豆に凝る人がいます。「ブルー・マウンテンしか口に合わなくて」とか。あるいは抽出の温度に煩いお方もいます。「64度の湯がコーヒー豆にあたるようでなければ…………」とか。さらに、「水質こそが、決め手」と断言なさる人とか。コーヒーの話だけは、一晩では語り尽くせないようですね。
コーヒーには、軟水。紅茶には、硬水。これが持論のコーヒー通もいるようです。コーヒーに合うミネラル分の多い水を求めて何千里というもあるのかも知れませんが。
東京、武蔵小金井に、「はけの湧き水」というのがあるらしい。一説に、小金井は昔、黄金井で、黄金とも形容したい湧き水があったとか。そして平成の今も、ごくわずか、ある場所に湧き水があって。コーヒーを淹れに最適の水と信じられているんだそうです。「茶房 はけの道」という店があって、ここではその水で淹れたコーヒーが飲めるらしい。
コーヒーが出てくるミステリに、『血と影』があります。英国人の、マイクル・ディブディンが、1990年に発表した物語。
「ゼンはハッとしてコーヒーカップを置き………………」。
アウレーリオ・ゼンは、警察本部長という設定。事件の背景がイタリアなので、何杯ものコーヒーが出てくる小説でもあります。『血と影』を読んでいると。
「ドットーレ・ヴィアネッロは非のうちどころのない淡いクリーム色の木綿のスーツを着…………………」。
エドアルド・ヴィアネッロは、建築家という設定。もちろん、コットンのスーツを着ているわけです。「非のうちどころのない」というのが、羨ましい。
さて、コットン・スーツで、美味しいコーヒーを飲みに行くとしましょうか。