パブもまた、ロンドン名物のひとつですよね。誰でも自由に入ることができるので、「パブリック・ハウス」。パブリック・ハウスを短くして、「パブ」と呼ばれるんだそうです。
ロンドンのパブは日本のバアに似て、違うところもあります。昼間と夜は、営業。でも夕方の時間帯は、お休み。酒を出してはいけない時間があるので。
人はパブに行くとふつう何を飲むのか。ビター。ビターは安くて、美味しい。度数もそれほど高くない。一パイントのビターを、ゆっくり飲む。我われが赤ワインを飲むときのように室温で、飲むことが多いようですね。
ロンドンのパブがお好きだったのが、小沼 丹。
「入口の右手の部屋に入ると街の連中が賑やかに談笑してゐて、そこの鋸屑を散らした床に立つて飲んでゐると、如何にも倫敦にゐると云ふ気分になる。』
随筆集『小さな手袋 珈琲挽き』に、そのように書いています。これは、フリート・ストリートのパブ「チェシャー・チーズ」での様子。日本でもむはよく「おが屑」を床に散らしていたものですが。後の掃除が楽なので。
パブが出てくるミステリに、『死時計』があります。1935年に、ディクスン・カーが発表した物語。
「最寄りのパブに行きませんか……………」。
これは探偵役のフェル博士が、誘われている場面。また、『死時計』には、こんな描写も。
「けばけばしい色のバスローブをまとったフェル博士は………………」。
これは、フェル博士の朝食での様子。「けばけばしい色の」とは、どんな色なんでしょうか。
ピンクの、目の詰んだバス・ローブで、ゆっくりカフェ・オ・レを飲んでみたいものですが。