失楽園とシュー・トゥリー

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失楽園は、ミルトンの詩ですよね。『旧約聖書』の「創世記」を下敷きにした長篇叙事詩。
英國の詩人、ミルトンが、1658年に書きはじめた詩。1663年に完成して、1667年に刊行されています。全十二巻。圧巻の書。日本の『源氏物語』に較べたいくらいのものです。 もちろん、アダムとイヴが楽園を追われる物語でもあります。
この『失楽園』を愛読した人に、マコウレイがいます。英國の歴史家、トオマス・ボビントン・マコウレイ。
マコウレイはただ愛読しただけでなくて、若い頃にはそのすべてを暗誦してもいた。
ある時、マコウレイは、イングランドのブリストルからアイルランドのコークまで旅をした。船で。その時、たまたま船の灯りが小さくて、本を読むことができなかった。そこでマコウレイはむかしを思い出して、『失楽園』を最初から暗誦してみることに。マコウレイはとうとう最後まで、暗誦することができた。そして、こう考えた。
「もしこの世の印刷された『失楽園』が皆失われたとしても、私が生きている以上、大丈夫である。」
『失楽園』が出てくるミステリに、『悪魔と警視庁』があります。1938年に、E・C・R・ラロックが発表した物語。

「 「神に対する人間の最初の叛逆と………………」 」

これは、ジョン・ロビンソンという人物が『失楽園』を暗誦する場面。また、『悪魔と警視庁』には、こんな描写も出てきます。

「ハイズ自身の靴はすべて ーー もともと木型を入れてかたちを整えてあったが…………………」。

レイモンド・ハイズは、作家という設定。
ここでの「木型」は、シュー・トゥリーのことでしょう。靴のための「ハンガー」みたいなものです。ひとたび履いた靴は、脱いだ後で必ずシュー・トゥリーを入れることになっています。靴の「甲」に皺を寄せないために。
甲に皺のない靴を履いて、『失楽園』を探しに行くとしましょうか。

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