オマージュとおしゃれ

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オマージュは、わりあいよく使う言葉ですよね。たとえばある作家の小説が好みであるような場合。わざとその作家の作風を意識して物語を作るようなことを、「オマージュ」と言ったりもするようです。
オマージュ hommage は、フランス語。英語の「リスペクト」とちょっと似ているのかも知れませんね。ふつう、「尊敬」の意味で用いられるようです。たとえばフランスでの手紙の最後に、「オマージュ」と書くと、それは日本語の「敬具」に近い表現になるんだとか。
オマージュは、「オム」 homme と関係があるらしい。オムからオマージュが生まれているんでしょうね。でも、「男」と「尊敬」に、いったいどんなつながりがあるのか。むしろ女と尊敬のほうが関係ありそう。そのうちに、「ファマージュ」の言葉が誕生するのかも知れませんが。
文学と、そこまで範囲を広げなくても。ミステリに絞っても「オマージュ」は少なくないようです。ひとつの例を挙げれば、ディクスン・カーの場合。ディクスン・カーは、ガストン・ルルーを高く評価して。ことにガストン・ルルーの、『黄色い部屋の謎』を。

「ガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』で示されている ー これは史上最高の探偵小説だ」

ディクスン・カーはその著『三つの棺』の中で、そんな風に言っているほど。いや、そればかりか、『引き潮の魔女』さえ書いています。『引き潮の魔女』は、ディクスン・カーなりの、『黄色い部屋の謎』の、オマージュだと考えられています。
そのガストン・ルルーが、1909年に発表したのが、『黒衣夫人の香り』。この中に。

「ボブ老人は幼児の魂を持っている。そして老女のようにおしゃれである。つまり、そのおしゃれはめったに対象を変えないということである。そして、一旦、簡素で非のうちどころのない好みの衣裳を採用したが最後、その印象的な調和を永久に保つことにもっぱら執着するという次第である。」

ガストン・ルルーは、以上のことを「おしゃれ」だと考えていたのでしょう。
とても実行できそうもありません。が、そのような考えのガストン・ルルーを、オマージュすること、やぶさかではありませんが。

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