スコットランドは、美しい国ですよね。そして、美味しい国でもあります。ウイスキーをはじめ、スコットランドならではの美食があるのは、ご存じの通りでしょう。
たとえば、スコーン。今ではスコーンはイギリスのハイ・ティーの欠かせないもののひとつ。でも、もともとスコットランドからイングランドへ伝えられてものです。
おしゃれのほうでもスコットランド発、イングランド経由というものが少なくありません。ひとつだけ例を挙げますと、ブローグ。ブローグはその昔、スコットランドの民族靴だったものです。
私のスコットランドの教科書のひとつに、『カワウソと暮す』があります。1959年に、ギャヴィン・マックスウエルが書いた、スコットランド物語。ギャヴィン・マックスウエルは、アーガイル家直系の家柄に生まれ育っていますから、「スコットランド物語」を書くに、恰好の人物でもあるでしょう。『カワウソと暮す』の中に。
「私たちは四季を通じてツイードの狩猟服を着込み、鋲を打って艶のない油脂塗った重たい狩猟靴をはき、足もとにはいつもスパニエルか、ラブラドルレトリーヴァーを従えていた。」
なるほど。スコットランドでのトゥイードには四季が関係ないんですね。 スコットランドが出てくる小説に、『恢復期』があります。堀 辰雄が、昭和六年に発表した短篇。
「その羊歯の密集してゐる叔母の別荘には、去年まではスコットランド人らしい老夫婦がいかにも品よささうに暮してゐた。」
これはおそらく当時の軽井澤での様子なのでしょう。
堀 辰雄が昭和七年に書いた短篇に、『麦藁帽子』があります。
「お前がちよつと斜めに冠つてゐる、赤いさくらんぼの飾りのついたお前の麥藁帽子は、お前のそんな黑い顔に、大層よく似合つてゐた。」
なにかストロー・ハットをかぶって、真夏のスコットランドへ行きたいものですね。