ピストルは、拳銃のことですよね。でも、もともとは「短剣」の意味だったとか。短剣転じて、短銃に。
イタリア、トスカーナを旅しますと、「ピストイヤ」Pist o i a という街があります。今は美味しいヴィーノの故郷としても、有名。でも、中世には、優れた短剣を産する場所でもあったという。そこで、「ピストレット」の言葉が生まれたんだそうです。
この「ピストレット」から後に、「ピストル」の名称に。1570年代の話なんですが。
ピストルには、「空砲」ということがあります。「空に向けて撃つ」。これは援護弁論の意味にも。たとえばAとBとが無駄な論争をはじめたとして。第三者のCがわざと、「腹が減った!」などと叫ぶ。これによって無益な論争が回避される。そんな発言のことを、「トゥ・ファイア・ヒズ・ピストル・イン・ジ・エア」と、言ったりするんだそうです。
ピストルが出てくる小説に、『モンテ・クリスト伯』があります。アレクサンドル・デュマが、1846年に発表した物語。
「こいつあお誂え向きのすばらしい冒険ときてるじゃないか。馬車に一ぱい、ピストルだの、ラッパ銃だの………………………」。
これはアルベールがフランツに向かっての科白。『モンテ・クリスト伯』には、また、こんな描写も出てきます。
「船長は、ピー・ジャケットとシャツを脱ぎ捨て、腰のさるまたをしっかりしめた。」
これは船上で、船長ですから、ピー・ジャケットも当然でしょうね。
寒い冬に。ピー・ジャケットを羽織って。トスカーナのピストイヤに、美味しいワインを飲みに行きたいものですね。