原稿用紙は、原稿を書くための用紙ですよね。今、原稿用紙を日常的に使う作家は、稀になりつつあります。
原稿用紙に万年筆は少数派で、多くは電子の力で書き、送る。
西瓜食ひ 原稿用紙 種集め
原稿用紙は、二十字の、二十行。計四百字。これがひとつの単位。原稿用紙一枚につき、いくらと原稿料が定められていたのです。
では、英文での原稿料はどうなのか。「一字いくら」。I l o v e y o u と書いたなら、三文字。これで、原稿料の計算をするわけです。
原稿用紙の歴史に詳しかったのが、藤本義一。ある時、師匠の川島雄三から、「原稿用紙のはじまり?」を訪ねられたので。藤本義一著『川島雄三伝』に出ています。藤本義一の説によりますと。江戸時代の、塙 保己一が今の原稿用紙を考えたんだそうですね。
「主人はのそのそ書齋から出て來て、吾輩の傍へ筆硯と原稿用紙を並べ…………………。」
もちろん夏目漱石の、『吾輩は猫である』の一節。これによりますと、初期の漱石は、原稿用紙に筆で原稿を書いたのでしょう。
一方、武者小路実篤には、特別の原稿用紙があったらしい。
「自分は十二行二十五字詰めの原稿用紙にうんと上手に……………………。」
武者小路実篤著『世間知らず』には、そのように書いたいます。まあ、人それぞれ使いやすい原稿用紙があるのでしょう。
『世間知らず』には、こんな描写も出てきます。
「たつぷりした絹紬のズボンの膝を折り………………。」
これは「隼夫」の穿いているズボン。絹紬と書いて、「けんちゅう」と訓みます。つまりは、ポンジーのこと。上品な横畝地。
時には、ポンジーのトラウザーズで、原稿用紙に向いたいものではありますが。