ヘンリーは、男の人の名前ですよね。たとえば、ヘンリー・マンシーニだとか。ヘンリー・マンシーニで想う曲に、『シャレード』があります。名曲。1963年の、ヘンリー・マンシーニの作曲。
『シャレード』は、1963年の映画。オードリー・ヘップバーンと、ケイリー・グラントの共演。主題歌がヘンリー・マンシーニで、ヘップバーンの衣裳がジヴァンシーというのですから……………………。
ヘンリーはまた姓でもあって。ひとつの例ですが。O・ヘンリー。もっともO・ヘンリーは、筆名なのですが。
O・ヘンリーは、1862年の生まれ。夏目漱石は、1867年の生まれ。活躍の時期も、ほぼ同じ。奇妙な偶然でもあるでしょう。
O・ヘンリーの数多い小説の中で、たぶん、いちばん知られているのが、『賢者の贈り物』でしょうか。
「一ドル八十七セント。それで全部だった。で、そのうちの六十セントは一セント銅貨だった。」
『賢者の贈り物』は、このようにはじまります。さて、算数の問題なのですが。これをよく読むと、一セント銅貨を別にした一ドル二十七セントには、一セントが含まれてはいない、と考えるしかありません。
でも、そんなことって、あるでしょうか。O・ヘンリーの計算違いなのか。
いえいえ、そうではありません。
アメリカの、1864年から1873年の間だけ、「ニセント銅貨」が発行されていた。つまり、一ドル二十七セントには、この「ニセント銅貨」が入っていた。だから、O・ヘンリーの計算はちゃんと合っているんですね。
ヘンリーが出てくる小説に、『ジーヴズと婚礼の鐘』があります。2013年に、セバスチャン・フォークスが発表した物語。
「サー・ヘンリー・ハックウッドは緑色のスモーキング ・ジャケット姿で、その全身から逼迫した空気を漂わせていた。」
サー・ヘンリー・ハックウッドは、主人公、バーティの友人という設定。また、『ジーヴズと婚礼の鐘』には、こんな描写も。
「ひと目で僕の物とわかる、淡いペイズリー柄の暗紅色のガウンを羽織ってベッドに座り………………。」
これも、バーティの友だち、エトリンガム卿の様子。エトリンガムはちゃっかりバーティのガウンを拝借しているわけですね。
ペイズリー柄のガウンで、O・ヘンリーの短篇を読む。この世の極楽でしょうね。