ドイツにも、たくさん美味しいものがありますよね。たとえば、「アイスバイン」。アイスバインというから冷たい食べ物かと思いきや。なんのなんの、旨そうな湯気の香りとともに出てきます。
ふつうアイスバインは大きな塊で深い皿に入っていますから、私なんぞはこれで充分という感じです。
以前、鎌倉のドイツ料理店「シーキャッスル」によく行ったものです。この「シーキャッスル」の名物料理が、アイスバインだったのです。
アイスバインは一例で。ドイツのソーセージの種類の多さには、圧倒されるほどです。では、どうしてドイツはソーセージなのか。もちろん、寒い国でもあるので、保存食として必要だったのでしょう。
そして、もうひとつは、ザルツ。塩。ソーセージの味の決め手はどうも塩にあるらしく、昔からドイツでは優良の塩が採れたという。ザルツブルグなど塩に因んだ地名があるのもそのためかも知れません。
ドイツのソーセージのひとつに、「シュニットフェスト・ローブルストlがあります。これは細長い、保存性の高いソーセージ。昔の旅人は、このサラミに似たローブルストを携えていたという。旅の途中で空腹となれば、いつでもローブルストを口に含むことができたわけです。
もう少し身近かなものに、揚げソーセージがあります。ソーセージに串を指しておいて、揚げる。その揚げ立てのところを、串を持って食べる。
「肱を脇に張った右腕で、箸を一本胸の前に捧げ持ち、それに突き刺して揚げたソーセージを、ひたすら食べることが瞑想であるかのように、ゆっくりゆっくり兵衛伯父さんが味わい、咀嚼し…………………。」
大江健三郎著『揚げソーセージの食べ方』には、そのように出ています。揚げソーセージには揚げソーセージの、食べ方がちゃんとあるんでしょうね。
ところで、ドイツが出てくるミステリに、『片腕の男』があります。1941年に、M・R・フィルブリックが発表した物語。
「騒々しい笑い声が別の部屋から聞こえ、誰かがドイツ語で悪態をついていた。」
また、『片腕の男』にはこんな描写も出てきます。
「黒の絹の靴下、鳩の色ような灰色の、折り目を長持ちさせるようにできているフランネルのズボン……………………。」
これはたぶん、クリースを縫ってあるトラウザーズなのでしょう。
ドーヴ・グレイ do v e gr ey は、1891年頃から用いられている言葉で、やや紫を帯びたミディアム・グレイのことです。
グレイ・フランネルのトラウザーズで、美味しいソーセージを食べに行きたいものです。