ジュリアンは、人の名前ですね。たとえば、ジュリアン・ソレルだとか。ジュリアン・ソレルが、『赤と黒』の主人公であるのは、いうまでもないでしょう。
『赤と黒』は、フランスの作家、スタンダールが1830年に発表した長篇。「赤」は軍服、「黒」は聖服の象徴だと考えられています。
「パリなら、ジュリアンのレナール夫人に対する立場はごく簡単に解決したことであろう。なにしろ、パリでは、恋愛は小説の子なのだから。」
スタンダールは『赤と黒』の中に、そのように書いています。
ジュリアンはジュリアンでも、「ジュリアン・ポタン」は薔薇の名前になります。リヨンの薔薇師、ペルネが生んだ新種の名前なのです。
ペルネは、フランスのリヨンに生まれ、リヨンで数多くの薔薇を育てた第一人者であります。かつては。
「薔薇を語るなら、リヨンを語れ」
と、謳われたほどの土地柄であります。ことほど左様、リヨンは絹織物の故郷であり、薔薇の故郷でもあるのです。
「ペルシャン・イェローを父とし、赤いアントアン・デュシェを母として、ここに、バラ四千年の歴史をやぶる偉大な黄金の花「ソレイユ・ドォール」が、この世に生まれたのである。」
並河 亮は『黄色のバラ』と題する随筆に、そのように書いています。もちろん、ペルネが創った薔薇なのです。余談ですが、並河は、「なびか」と訓むのでそうですね。
並河 亮の『黄色のバラ』は、昭和二十九年『暮しの手帖』第二十三号に掲載されています。
同じ、『暮しの手帖』第二十三号には、「ワイシャツの話』も出ています。これは『グッド・ハウスキーピング』誌からの転載という形になっているのですが。この中に。
「西洋ではワイシャツは、翌日の太陽をみないとか、一度ぬいだら、そのシャツはもう着ないとかいわれていて、まい日とりかえるのが原則になっています。」
そんなふうに出ています。これは実に簡単なことで、シャツは純然たる「下着」なので、ひとたび袖を通したなら、洗濯をするという習慣があったのです。
ですから理想を申しますと、自分で洗って、自分でプレスするのがいいのでしょう。
さて、新しいシャツを着て、スタンダールの本を探しに行くとしましょうか。