マカロニは、パスタのひとつですよね。
マカロニがあって、スパゲッティがあって、ペンネがあって、フェットチーネがあって、
コンキリエがあって、ファルファッレがあって……………。
マカロニはまた、イタリアの象徴でもあります。「マカロニ・ウエスタン」というではありませんか。あれはマカロニを食うところの西部劇ではなくて。「イタリア式西部劇」のことなのですから。
マカロニのなによりの特徴は、中空。穴開きパスタ。穴が開いていないでは「マカロニ」とは呼べません。
ではなぜマカロニには穴が開いているのか。
昭和四年に、中村正常が『マカロニ』と題する戯曲を発表しています。これはどうしてマカロニには穴があるのかを巡ってのユウモア劇でありました。
中村正常は、中村メイコのお父さんなんですが。
日本人でわりあい早くマカロニを食べたお方に、永井荷風がいます。
「……………マカロニの煮込みに、名も知れぬ安葡萄酒で気焔を吐いたが…………………………。」
永井荷風著『ふらんす物語』に、そのように出ています。
これは荷風がそれ以前のニュウヨーク時代を想い出している場面。
ということは、明治三十六年頃のことでしょう。その頃すでに荷風は、キャンティを飲み、
マカロニに舌鼓をうっていたものと思われます。
「僕は永い事、スパゲッティというものはマカロニの芯だと思っていた。」
團 伊玖磨は『なおなおパイプのけむり』の中に、そのように書いています。
一度、太いパスタを作って。その中央の芯を抜くと、マカロニとスパゲッティとが生まれる。これはなにも團 伊玖磨に限らず、純真な子どもたちの中には、そのように思っていた者もいたでありましょう。
ただ、團 伊玖磨がこの説を、フィレンツェのリストランテで披露したのは、ちょっと場所が悪かったのかも知れませんが。
團 伊玖磨の名随筆『ひねもすパイプのけむり』に、「マッキン」の話が出てきます。
「マッキン」は、トラウザーズ裾口の、ターンナップ・カフのこと。ただし、やや古風な業界用語という印象があるのですが。
「マッキンとはイギリスの将軍、マッキントッシュの名の略だそうである。」
團 伊玖磨は、そのように書いています。
この説は、「メンズウエア」から電話で教えられたんだそうですが。
この一行によって、團 伊玖磨が「メンズウエア」の客だったことが窺えるのですが。
「メンズウエア」はその昔、壱番館の近くにあった名店。三島由紀夫とか伊丹十三なども
顧客だった聞いているのですが。
どなたか真っ当なマッキン付きのトラウザーズを仕立てて頂けませんでしょうか。