コーンビーフとコットン・スェーター

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コーンビーフは、塩漬け肉のことですよね。保存食。保存食ですから、大航海時代の船の食料には、ぴったりだったでしょうね。
コーンビーフなのか、コーンドビーフなのか。c orn ed b e ef ですから、ほんとうは、
「コーンドビーフ」なのかも知れませんね。
でも、底が広くなった罐詰を想うと、やはり「コーンビーフ」なのかなあと。
「コーンドビーフ」のほうが意味が広い。「塩漬け牛肉」なんですから。なにも罐詰と決まっているわけではありません。
たぶん昔は帆船などに、大きな「コーンドビーフ」を積み込んだものなんでしょうね。
一方、「コーンビーフ」は懐かしいものです。「リビー」のコーンビーフだとか、「ノザキ」のコーンビーフだとか。
1960年代。原宿の「コープ・オリンピア」の一階はスーパーマーケットで、よくコーンビーフを買ったものです。

「リビー」L ibby は、1868年、アメリカ、イリノイ州で、はじまっているんだそうですね。罐詰のコーンビーフとして。家庭でも使いやすいコーンビーフを、罐詰で。
コーンビーフの罐詰は、「台形」が特徴になっています。あれは1876年に、「リビー」が考えたことなんだとか。もちろん、中のコーンビーフを取り出しやすいために。
今の包装は、1933年製。ちょっとクラッシックな感じがあるのは、そのためなんでしょうね。

「ビスケット、コーンビーフ、それから塩気がはいらないようにと、ひき潮のとき川口からとってきた清水にすこしブランデーをまぜて、結構な食事になった。」

1888年に、ジュール・ヴェルヌが発表した『十五少年漂流記』に、そんな一節が出てきます。
少なくとも1880年代のフランスに、なんらかの「コーンビーフ」があったものと思われます。

「僕は水ぎわの岩に腰かけ、とりあえず食事にとりかかりました。コオンド・ビイフの缶を切ったり、枯れ枝を集めて火をつけたり……………。」

芥川龍之介が、昭和二年に書いた『河童』にも、コーンビーフが出てきます。日本の小説に描かれるコーンビーフとしては、比較的はやい例かも知れません。ただし、芥川龍之介は、
「コオンド・ビイフ」と書いているのですが。

「………洋皿へコンビーフだの生のキャベツなどを盛って来て……………………。」

龍膽寺雄が、昭和三年に発表した『放浪時代』の一節なのですが。
龍膽寺雄二は、「コンビーフ」と、表記しています。
コーンビーフが出てくるミステリに、『空の幻像』があります。アン・クリーヴスが、
2014年に発表した物語。

「スープのあとには、“バノック” と呼ばれるパンと、大皿に盛った羊肉とコーンビーフ…………………。」

この場所は、シェットランドの北、アンスト島。そこでの結婚式の様子なのです。著者の、
アン・クリーヴスは、なぜかシェットランド島を背景に、ミステリを書くのが得意な作家なのですね。
また、『空の幻像』には、こんな描写も出てきます。

「………黒いズボン、ぴかぴかに磨いた靴、総柄の手編みセーター……………。」

これは土地の老人の、教会行きの一張羅としての着こなし。シェットランドのことですから。フェアアイル・スェーターなのでしょう。
時は、夏。もし日本だったら、コットンのサマースェーターが欲しいところではありませんか。
どなたか細いコットンのスェーターを編んで頂けませんでしょうか。

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