革とカーディガン

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革は、レザーのことですよね。「レザー・シューズ」なんて言うじゃありませんか。あるいはまた、「皮ジャン」だとか。
ところで、「皮」なのか「革」なのか。私は勝手に、「皮」から「革」が生まれるのだと、考えています。
「原皮」という言葉があります。より獣に近い状態の「皮」。この皮を鞣すことによって「革」に。
あるいはまた、「皮革」とも。これは「皮」も「革」に一緒にして、「皮革」と呼ぶのではないでしょうか。
革の話が出てくる名随筆に、『ヨーロッパ退屈日記』があります。いうまでもなく伊丹十三の代表作でありましょう。

「エルメス」は、世界で一番いいハンドバッグの店である。その革は、あくまでもしなやかであり、その形は、単純にして重厚、そうして、絶対に毀れない金具の結構というものが、実にこころ憎いのだ。

そんなふうに書いています。伊丹十三はこの随筆を、1962年頃に書いているのです。今からざっと六十年前ということになります。
伊丹十三は、1933年5月15日に生まれていますから、二十九歳くらいの時でしょうか。もちろんその時の名前は、伊丹一三だったのですが。伊丹一三は、映画俳優としての藝名でありました。本名は、池内義弘。それというのも、映画監督の、伊丹万作自体が藝名であったことによるものです。
「その革はあくまでもしなやかであり…………………。」
伊丹十三は、こう記しています。なぜか。極上の「革」にするには、動物を囲いなしに育てることがあります。ふつうは柵ないことはあり得ないのですが。なぜか。動物が檻にぶつかって、体に傷をつけないように。柵から逃げ出すマイナスよりも、傷のない革を得ることを優先するために。
さて、丁寧になめされた革から製品を作る。この時、革全体の中から極上部分だけを。しかも老練の職人が、指で触って、似たような革だけを集めて、ひとつに商品に。だから永く使って、狂いがない。ただしうんと高価な品物にはなってしまうのですが。
まあ、佳い革とは、そんなものであるようですね。
革が出てくるエッセイに、『南仏のトリュフをめぐる大冒険』があります。英国人の、ピーター・メイルが、1996年に発表した読物。

「背丈はベネットとほぼ同じで、白のTシャツとジーンズに古びた革ジャケットを着ている。」

これは、「アンナ」の着こなし。アンナは、元モデルという設定。「ベネット」は、プロヴァンスに住むイギリス人男性ということになっています。
また、『南仏のトリュフをめぐる大冒険』には、こんな描写も出てきます。

「乾いて固まったクリームのような色相の厚手の絹のシャツに黒いカシミヤのカーディガンをざっくりはおり、ズボンは黄土色のギャバジンである。」

これもまた、英国人の、ジュリア・ポオの着こなし。黒の、カシミヤのカーディガンは、応用範囲の広いものですね。
カーディガンは、1854年、クリミア戦争中、カーディガン男爵が考案したもの。負傷者でも、前開きなので、着脱が比較的、容易であったので。
1854年のカーディガン以前には、「前開き式」は、存在しなかったものです。
好みのカーディガンを着込んで着込んで。最後に、革のエルボー・パッチを付けるようになりたいものですね。

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