煙草とタタサル

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煙草は美味しいものなんだそうですね。煙草については私、ひと言も語る資格がありません。
生まれてこの方、ただの一本の煙草も口にしたことがないのですから。煙草の味については、語りようもありません。まあ、これからの人生でも、たぶん煙草を吸うことはないでしょう。
けれども、『煙草』と題された小説があることは、識っています。
昭和二十一年に、三島由紀夫が発表した短篇。昭和二十一年『人間』六月号に、掲載されたものです。

「川端康成氏がこの短編を原稿で読まれ、雑誌「人間」に紹介して下さったのが、私の文士になるキッカケになったのだが……………………。」

三島由紀夫自身は、そのように書いています。文中の、「この短編」が、『煙草』を指しているのは、言うまでもないでしょう。
三島由紀夫が、川端康成にはじめて会ったのは、1946年1月27日のことと、記録されています。三島由紀夫、二十一歳。川端康成、四十七歳のとき。
三島由紀夫が天才であったのは、間違いないでしょう。が、その原稿を読んだ四十七歳の川端康成が、すぐに雑誌『人間』の編集部に連絡をとったのも、稀有なことでしょう。
また、三島は三島で、これを徳として、毎年正月に、鎌倉の川端康成邸への、年賀を欠かさなかったという。
昭和二十七年『文藝春秋』一月号に発表された短篇に、『クロスワード・パズル』があります。もちろん、三島由紀夫の小説。この中に。

「焦茶の外套に細かい格子縞のマフラーをして………………………」。

と、出てきます。あるホテルに宿泊に来た、五十代の紳士の 様子。
私は勝手に、タタサルを想ってしまいました。
t att ers all は、つい「タッタソール」と訓んでしまいたくなります。
しかし、もともとはリチャード・タタサルの名前から出ているわけで、T att ers all は「タタサル」の音に近いのではないでしょうか。
タタサルのシャツを着て。三島由紀夫の初版本を探しに行くとしましょうか。

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