サドルとサック・スーツ

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サドルは、鞍のことですよね。「鞍部」( あんぶ ) と言ったりもするようですが。
サドルは自転車に乗る時にもなくてはならないものです。十九世紀以前の「サドル」 s addl e は、主に馬用でした。
今に、「サドル・レザー」の名前が残っているのは、そのためであります。馬をはやく走らせることは、鞍を酷使することでもあって。そのためにも、上質の鞍が求められたものです。
むかし「エルメス」なども、極上の鞍を作らせては天下一品とされたんだそうですね。それが今や「ジョン・ロブ」に肩入れするのも、分かるような気がします。鞍を縫うことと、靴を縫うことには共通点がありそうですからね。
そういえば靴にも、「サドル・シューズ」があります。「サドル・オックスフォーズ」とか。オックスフォード型が多いので。一見、靴の甲に、鞍が乗っているように想えるので、「サドル・シューズ」。
むかしの『メンズ・クラブ』に、「サドル・シューズ」の広告が出ています。1967年『メンズ・クラブ』8月号に。
その頃、神田にあった「平和堂」の宣伝。たしか、佐宗さんという方が店主だった記憶があります。値段が、一足、3、900円というところにも、時代を感じさせるではありませんか。
この『メンズ・クラブ』の同じ号に、星野醍醐郎先生が、「背広誕生からアイビー・ルックまで」と題して、記事を書いています。

「………元来、紳士服というものは、燕尾服やモーニング・コートでわかるように、シェープしたものという固定観念があったわけで、サック・コートのようなしぼりのない服というのは………………。」

そんなふうに書きはじめています。今からざっと五十年以上も前の服飾物語なのですが。まったく時代を感じさせないものがありますね。
サック・コートであり、サック・スーツであります。が、サック・スーツが一般の紳士服となって、次第にフィットするようになってゆくのです。
なにかサック・スーツに、サドル・シューズを合わせてみたい気分になってきましたね。

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