モスとモアレ

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モスはロンドンの貸衣裳屋のことですよね。正しくは、「モス・ブラザーズ」。
貸衣裳屋であることは間違いないのですが。あらゆる服装が揃っていることに、定評があります。たとえば、ある日、突然、「ハムレット」を演じてみたいと思ったとして。「モス」に駆けつければ、衣裳だけはなんとか間に合うに違いありません。
もちろん、貸衣裳だけでなく、商品のなかには販売可能なものも、含まれています。急なパーティーなどにも、心強い味方でもあるでしょう。
「モス」のはじまりは1881年のことで、その時代には古着屋だったそうですね。
「モス」が出てくるミステリに、『オパールは死の切り札」があります。リチャード・コンドンが、1978年に発表した物語。

「ところで、わたしは先日ロンドンの <モス・ブラザース > ですごく頑丈な革製のハットボックスをたったの八ポンドで手にいれたっbだ。」

これは日本人の富豪で、元貴族の、藤川勇太の科白。
ハット・ボックスは、シルク・ハット専用の鞄のこと。船旅などで、いくつものシルク・ハットを持ち運ぶには、重宝する鞄。ただし、今現在では、ハット・ボックスを作る会社は存在しないらしい。藤川勇太のように中古品のハット・ボックスを探すのが、てっとり早いのかも知れませんが。
『オパールは死の切り札』には、こんな描写も出てきます。

「彼は白いスカーフと山高帽を身につけ、モアレの折り返しのついた黒のイヴニング・コートを着て、表に待たせてあった車に乗りこんだ。」

ここに、「彼」とあるのが、藤川勇太。余談ではありますが、「車」は、1935年型のロオルズ・ロイスという設定になっています。
また、「イヴニング・コート」とは、ディナー・ジャケット。
ディナー・ジャケットの「拝絹」が、モアレになっているものと思われます。
モアレ m o ir e は「杢目模様の絹地」。もともとはフランス語の「モアール」 m o ir e から来ています。「波目模様」とも。
「拝絹」がモアレ地になったディナー・ジャケット、「モス」に行ったら探せるでしょうか。

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