アシェンデンとアクアスキュータム

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

アシェンデンは、本の題名ですよね。『アシェンデン』Ash end en。
作者は、サマセット・モオム。1928年に刊行されています。
アシェンデンは、主人公の名前。ただし、名前だけの「アシェンデン」。姓なのか名なのかも、定かではありません。
ひと言で言って、第一次大戦下のスパイ物。アシェンデンのモデルは、モオムその人。自分の名前では具合が悪いので、「アシェンデン」の名前を使ったまでのこと。
第一次大戦中以来、モオムが英國秘密諜報部員だったのは、公然の秘密でしょう。
さて、ここで問題なのは。モオムの実際のスパイ活動は、1917年頃のことです。それがどうして1928年まで、出版が遅れたのか。
これは英國政府の都合だったのです。もう少し具体的に申しますと、ウインストン・チャーチルの検閲によって。チャーチルは、もともとの『アシェンデン』の内容を、大幅に削除。理由は、「国家機密漏洩に抵触する」ということであったらしい。
モオムの読者としては、無削除版の『アシェンデン』が読みたいものではありませんか。今から百二十年ほど前の話ですから、とうの昔に時効のはず。また、削除されたモオムの原稿はどこかで眠っているはずです。
『無削除・アシェンデン』、ベストセラー間違いなしだと思うのですが。
『アシェンデン』が出てくる小説に、『ジェイムズ・ボンド伝』があります。ジョン・ピアースンが、1973年に発表した物語。
『ジェイムズ・ボンド伝』は、一応、「伝記」となっているのですが、私自身は「小説」として読んだものですから。

「 『アシェンデン』にそのまま出てくるような人物、そういえば彼はモームを知っていて、彼の作品の人物のひとりは自分をモデルにしたものだとよくいっていた。」

これは、「マドックス」という男についての話として。
また、『ジェイムズ・ボンド伝』には、こんな描写も出てきます。

「三日前にアークハートの経費でアクアスキュータムで買った薄地の背広に着がえ……………………。」

これは、著者の、ジョン・ピアースンの様子。
アクアスキュータムは、もともと倫敦のテイラーだったのです。ダニエル・バックス経営の、「バックス」 B ax という名前でありました。1851年に、「バックス」の経営に参加したのが、ジョン・エマリイ。このジョン・エマリイが、ワックスを使わない防水地を、考案。
1890年頃、新たな経営者として、アーネスト・ジョージ・コミンが社長に。そしてアーネスト・コミンが、この防水地に、「アクアスキュータム」と命名したのです。それはラテン語で、「水の盾」であったのは、よく知られているところでしょう。
アクアスキュータムのスーツを着て、アシェンデンを気取りたいものではありますが………。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone