スワンとスティフ・カラア

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スワンは、白鳥のことですよね。白鳥は、純白で、美しい羽根と美しい姿とを持っています。それで、時に、美しい女の化身にもたとえられるのでしょう。
スワンはまたケエキにもあって。シュウクリイムの白鳥で、「スワン」。つまりはスワンの形になったシュウクリイムのことですね。
食べるスワンがあれば、観るスワンもありまして。ご存じ『白鳥の湖』。
『白鳥の湖』は、チャイコフスキーの作曲。1876年のこと。1876年2月20日に、モスクワの「ボリショイ劇場」で初演。でも、この時には必ずしも成功とは言えなかったらしい。それで、お蔵入り。
ところが、1895年になって。チャイコフスキーの弟子でもあった、M・プチパによって再構成されて。ふたたび『白鳥の湖』が。
「マリンスキー劇場」で。これが、拍手喝采となって今に至っているわけですね。
『白鳥の湖』にも、いくつかの物語があって。ハッピーエンドもあれば、そうではない『白鳥の湖』も。いずれにしても世界中のプリマ・ドンナにとって『白鳥の湖』は、最高の晴れ舞台でありましょう。主役はたいてい善悪の二役でもあって、難しいこと、難しいこと。
『白鳥の湖』の公演。さるプリマ・ドンナにお誘いを受けた作家が、観に行って。その作家ははじめて観る『白鳥の湖』に魅入った。ことに、最後の瀕死の場面に。プリマ・ドンナの白鳥がぴたりとも動かないまま、幕に。
これを不思議に思った作家、楽屋にプリマ・ドンナを訪ねる。そして、訊く。
「身体が動かないのは、妙だねえ。」
それに対するプリマ・ドンナの答え。

「ええ、あそこはね、ほんとうに死ぬんでございますのよ。」

劇で、バレエで、渾身こめて、踊る。息も乱れるでしょう。でも、すぐ、その後で、「死ぬ」。まあ、これも「藝」なのでしょう。
スワンが出てくるミステリに、『時のみぞ知る』があります。2011年に、英国のジェフリー・アーチャーが発表した物語。

「だれでも知っている<スワン >のロゴ・マークが入った、ロイヤル・ブルーの箱だった。テーブル越しにそれを渡されたメイジーは、ゆっくり箱を開けた。」

物語の背景は、1920年代の倫敦。箱の中には、手袋とスカーフが入っていて、パトリックからの贈物。「スワン」は当時の有名店かと思われます。
また、『時のみぞ知る』には、こんな描写も出てきます。

「グレイのスーツが二着、マダム。濃紺のブレザーが一着、白のワイシャツが五枚、白のスティッフ・カラーが五本……………………。」

「マダム」と呼ばれているのが、メイジー。主人公のハリーのお母さんという設定。
ハリーが名門校に入ったので、制服を買っている場面。
シャツとは別に、カラアを。昔ふうの「付け襟」なんですね。
st iff coll ar 。着脱自在の襟のこと。つまり、ディタッチト・カラア。
「付け襟」は、アメリカではじまっています。1820年に。ニュウヨーク州のトロイで。ここに住む、オーランド・モンタギューによって。
オーランド・モンタギューのご主人は潔癖で、常に純白のシャツを好んだ。
そこで、オーランドは、襟だけを外して洗うこと思いついたのですね。ここにディタッチト・カラアが誕生したわであります。
純白のシャツを着て、『白鳥の湖』を観に行きたいものですね。

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