ハモン・セラーノとハーフ・トラウザーズ

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ハモン・セラーノは、生ハムのことですよね。スペインの生ハムなので、「ハモン・セラーノ」j amón s err an o 。言葉通りには、「山のハム」の意味です。
でも、どうして「山」なのか。生ハム造りには、風通しの良い、乾燥した土地が向いているから。まあ、その意味では「風化」させるのであります。
豚の骨付き肉と、塩と、風だけ。ハモン・セラーノの原材料は、それだけ。自然に乾燥させた保存食ですから、常温で保存できるのですね。よくカウンターの上に吊してあるハモン・セラーノを見かけるのは、そのためなのです。
極上ハモン・セラーノのための豚は、ドングリだけを与えて、育てる。このドングリがまわりまわって、佳い肉質と芳香とを生むのであります。
ハモン・セラーノは、紙より薄く切って食べるのが、通。スペインにはハモン・セラーノを専門に切る職人がいて、「コルドナータ」。
スペインの食通で、洒落者は、好みのコルドナータを指名して、切らせる。もし、指名のコルドナータが休みの日には、ハモン・セラーノを食べない。
プロのコルドナータは、ハモン・セラーノの「繊維の流れ」を読む。「繊維の流れ」に逆らうように切ると、口に含んだ時の舌ざわりが滑らかに。悦楽の一瞬であります。
部屋の中の温度よりも、口の中の温度が高いので、ハモン・セラーノは、まさに口の中で、溶ける。この温度変化を愉しむ快楽が、ハモン・セラーノの命なのですね。
スペインに生ハムがあれば、ドイツにはソーセージがあります。ドイツのソーセージが出てくるミステリに、『レベッカへの鍵』があります。英国人作家、ケン・フォレットが、1980年に発表した物語。時代背景は、1940年代の、エジプトに置かれています。

「フランスのシャンパン………イギリスのマーマレード………ドイツのソーセージ………鶉の卵………スコットランドのサーモン………」

これはドイツ軍のスパイ、アレックス・ヴォルフが鞄から出した食料。このほか、キャヴィアも。大戦中のことですから、宝の山であったでしょうね。
また、『レベッカへの鍵』には、こんな描写も出てきます。

「ブッシュ・ジャケット、カーキ色の半ズボン。半ズボンには折返しがついていて、蚊を防ぐために膝下までおろしてボタンで留めるようになっているのだが……………………。」

これは軍服としての、ハーフ・トラウザーズ。なるほど、半ズボンのカフにはそんな理由もあったのですね。膝下までのホーズと合わせれば、脚の肌を包めるわけですから。
なにか好みのハーフ・トラウザーズで、ハモン・セラーノを食べに行きたいものですね。

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