スパイは、密偵のことですよね。
密偵の前には、「間諜」の言い方もあったらしい。間諜のもっと以前は、「間者」でしょうか。
スパイ spy は、1250年頃からの言葉なんだそうですですから、古い。スパイのもとの言葉は、「エスパイ」esp i e 。「見る」の意味があったそうですね。
スパイは主に相手側の密偵で。味方側の密偵は、「エージェント」などと言ったりするんだそうですが。
密偵と絹とが大いに関係がある。こう言いはじめると、眉にツバをつけるでしょうか。でも、これはほんとうの話なのです。
今も、タイ・シルクの銘柄に「ジム・トンプソン」があります。これは1950年代に、アメリカの、ジェイムズ・トンプソンが復興させたので、「ジム・トンプソン」の名前があるわけです。
1942年、ジェイムズ・トンプソンは、「OSS」の職員に。OSS は今日の「CIA」のこと。つまりは、アメリカのエージェントとなるのであります。
1945年にはジェイムズ・トンプソンは、タイのバンコック支局長に。戦争が終ったので、国からは帰国命令が。でも、トンプソンはばが気にいっていたので、残ることになったのです。
その時、トンプソンが気づいたのが、タイ・シルクの衰退。このタイ・シルクに私財を投げ打ったのが、ジム・トンプソンだったのであります。
「………村落で当時製造されていた少量のタイシルクの質に深く印象づけられた。」
松本清張著『熱い絹』に一節に、そのように出ています。『熱い絹』は、トンプソンの事実をもとにした創作なのですが。松本清張はバンコックに赴き、徹底的にトンプソンの足跡を辿った上で、「小説」に仕上げているのです。
スパイが出てくるミステリに、『ことわざ殺人事件』があります。1950年代に、
ジョン・ディクスン・カーが発表した物語。
「この御婦人が、ほんとうのスパイだったことが、諸君には分らんかね?」
これは、「フェル博士」の科白として。
1958年『エラリイクイーンズ ミステリマガジン』3月号に掲載された小説でもあります。『ことわざ殺人事件』には、こんな描写も出てきます。
「白いフラノのズボンをはき、スポーツ・コートを着て、絹のスカーフを巻きつけた彼は……………………。」
これは「カール・クーン」という若者の着こなしとして。
「スポーツ・コート」 sp ort c o at は日本語の「替上着」に近いものでしょう。オフ・ビジネスにふさわしいジャケットのことです。主に、アメリカ英語。
イギリスなら、「カントリー・ジャケット」でしょうか。
どなたかシルクのスポーツ・コートを仕立てて頂けませんでしょうか。