旅行は、旅のことですよね。英語なら「トラヴェル」でしょう。英語のトラヴェルは、
フランス語の「トラヴァイユ」と関係があるんだそうです。
昔の旅は、「苦行」だったからでしょうね。
旅で、長崎を好んだ文人に、芥川龍之介がいます。少し後の時代ですが、永井荷風も長崎への旅がお好きだったらしい。
今も昔も長崎名物はカステラということになっています。
「両端の色濃い焼き目のなかに、ザラメの砂糖が入っていたりすると、シャリシャリという噛んだ音はまた格別の味であり、そのカステラにあたることが楽しみであった。」
千 宗室は、『カステラと私』と題する随筆の中に、そのように書いています。また、その昔、利休が「ふのやき」と呼んでいた菓子は、カステラに近いものではなかったかと、推理してもいるのですが。
「丸山の待合「たつみ」に至る。高島秋帆の妾宅なりし家なり。金張付け金襖………。」
大正十一年五月十八日の『長崎日録』に、芥川龍之介はそのように書いています。
高島秋帆は、江戸期の西洋砲術師だった人物。幕府は国防のために、高島秋帆だけを例外として、西洋砲術を許したものです。
芥川龍之介は大正十一年四月二十五日から、五月三十日まで、長崎に。これが二回目となる長崎旅行。
一度目は、大正八年五月。菊池 寛との二人で、長崎に赴いています。
芥川龍之介が大正十一年に発表した短篇に、『ロビン・ホツド』があります。芥川は、
「ロビン・ホツド」と書いているのですが。この中に。
「ロビン・ホツドと云ふ男は英吉利のシヤウツドの森に住んで居たのです、同類が大勢ありましてリンカン・グリーン、リンカンは英吉利の町の名前です、其處で出来る緑色の着物を一着して……………………。」
そんな文章が出てきます。
「リンカーン」L inc oln は、イングランド東部の町。中世のリンカーンは鮮やか緑色のウール地を産出することで知られていました。
同じように、コヴェントリーがブルウで、ヨークシャーがグレイと決っていたのであります。
どなたかリンカーン・グリーンのコオトを仕立てて頂けませんでしょうか。