トカイと鳥打帽

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

トカイは、トカイ・ワインのことですよね。
主に食後用の、甘口ワイン。ハンガリーは、トカイの名産なので、「トカイ・ワインと呼ばれるわけです。
T ok aj と書いて、「トカイ」。トカイ・ワインはまた「高貴なるワイン」でもあります。なぜなら「貴腐葡萄」から造られるワインなので。
貴腐葡萄はなにか特別な条件から、遅摘みされる葡萄のこと。ですから特に糖度が高められた葡萄なのです。
おそらくはフランス語の、「プリュテール・ノーブル」p o ur it ur e n obl e から、「貴腐」の言葉が生まれているのでしょう。
ひと口にトカイ・ワインといってもいくつかの等級に分かれているんだそうですね。その中の最上級が、「トカイ・エッセンシア」なんだとか。まさに高貴なる甘口ワイン。
昔、ロシアのエカテリーナ二世もトカイ・ワインがお好きで、ロシア産のトカイ・ワインを造らせようとしたほど。でも、成功はしなかったそうですが。
ハンガリーのトカイ・ワインは、その土地に発送する濃霧が、葡萄を包むところにあって、濃霧が生まれないことには、「貴腐葡萄」にはならないのだそうです。
ことにトカイ・ワインがお好きだったお方が、ヴィクトリア女王。オーストリアの
ヨーゼフ一世は、女王の毎年の誕生日に、お年の数だけのトカイ・ワインを贈ったと伝えられています。
ヴィクトリア女王の誕生日は、5月24日。
1900年5月24日には、八十一歳のお誕生日。ヨーゼフ皇帝は、「81ダース」のトカイ・ワインを、ヴィクトリア女王に贈ったのだそうです。
トカイ・わが出てくるミステリに、『四つの署名』があります。コナン・ドイルが、1890年に書いた、「ホームズ物」の第二作。

「………それともトカイ・ワインになさいますか?」

これは、「ショルトー」が客に飲物を勧める場面でのこと。
『四つの署名』に、ホームズが鳥打帽をかぶるところが出てきます。ただし、これには少し説明が必要かも知れません。
「ホームズ物」の挿絵は、シドニー・パジェットが有名でしょう。が、シドニー・パジェットが「ホームズ物」に絵を添えるようになったのは、1893年からのこと。
今、私が開いている「光文社文庫」版には、リヒャルト・グートシュミットの挿絵が添えられています。そのリヒャルトの絵には、鳥打帽姿のホームズが描かれているのです。
これは正しい描写だと思います。コナン・ドイルの「ホームズ物」が、1890年代の英國でなぜ大好評だったのか。いろんな理由があるでしょう。が、その中のひとつにホームズの「庶民性」があったのです。ホームズは紳士でしたが、時にはあえて「庶民」の着るような恰好をしたから。
鳥打帽もまた紳士階級よりは庶民派に似合う帽子だったからです。
どなたかリヒャルトが描いているような鳥打帽を作って頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone