トーストは、朝に食べるものですよね。いや、なにも朝とは限っていませんが、朝食にトーストはふさわしいものでしょう。
トーストはさっと軽く焼いたのがお好きな方も、こんがり焼いたのがお好きな方もいるようです。私は、軽焼トーストが、好き。
夏目漱石はどんな焼き方のトーストがお好きだったのでしょうか。
「顔を洗つてから、例の通り燒麺麭と牛乳と半熟の鶏卵を食べて……………。」
夏目漱石が大正四年に書いた『硝子戸の中』に、そのような一節が出ています。日曜日の7時15分頃のこと。
夏目漱石は、「燒麺麭」と書いて、「トースト」のルビを振っています。また、「例の通り」とありますから、漱石は毎日のようにトーストを召し上がっていたものと思われます。
フランス文学者の、辰野 隆の結婚式に漱石が出世して。間がもてなかったのか、南京豆ばかり食べていたという話があります。
その辰野 隆もトーストはお好きだったようですね。
「朝はパン二斤(昔流に云えば四半斤)。バター、チーズ、鮭か鱒の薄切数片と、カッフェ……………。」
辰野 隆著の随筆『蛮食』に、そのように書いてあります。
辰野 隆がお好きだったというのは、昼にもトーストをご所望したらしい。それも、朝は「カッフェ」でも、昼には「水わりウィスキ」をお飲みになったとか。いいですねえ。
さらに、辰野 隆は夜にもトーストを召しあがった。これはフランス語上達の秘訣なんでしょうか。
「先ずあなたのピュスラージュを」
辰野 隆著『ふらんすとふらんす人』に、そんな会話が出てきます。辰野 隆がパリの下宿で、下宿の主人とソーテルヌを開ける場面で。ワインの開けたてのひと口を「ピュスラージュ」と呼ぶんだそうです。
これは辰野 隆が下宿屋の主に焼き栗を持って行った時の話として。
ゲーテの『ファウスト博士』にも、トーストを食べる場面が出てきます。1808年に第一部が執筆されているのですが。
女性は当時、トレーンのあるドレスで、登場。「トレーン」tr a in は、ドレスの曳き裾のこと。「列車」という時のトレインと同じ綴りです。
ドレスのトレーンは、正装。長ければ長いほど、正装であることを意味します。
どなたかトレーンのあるドレスに似合いそうな男の正装を仕立てて頂けませんでしょうか。