拳闘とケピ

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拳闘は、ボクシングのことですよね。
人間の拳だけで闘うスポーツなので、拳闘。ひと時代前の日本では多く「拳闘」と呼ばれたんだそうです。
ボクシングに似た競技は、古代ギリシャにもあったそうですから、古い。でも、ふつう、近代ボクシングは英国で生まれたと、考えられているようです。
1867年の「クイーンズベリー・ルール」によって。クイーンズベリー侯爵は、当時のボクシングに理解のあった貴族。
英国、1867年の「クイーンズベリー・ルール」によって、今の一分間の休憩が誕生したのです。三分闘って、一分間休む。そしてまた、グローブを嵌めることも。それ以前にはたいてい素手で闘ってという。
「クイーンズベリー・ルール」には、「ベルトの下を打ってはならない」の決まりも含まれていました。今日のボクシングは、ほぼ「クイーンズベリー・ルール」に沿ったものになっています。
十九世紀の拳闘選手は多く、下半身にタイツを穿いた。そのタイツには、なんらかのベルトを結んでいたのでしょうか。

昔、日本の拳闘選手に、「白井義男」がいたのをご記憶でしょうか。
白井義男は、1952年に世界チャンピオンになっている人物。これは日本人ボクサーとしては、はじめの世界チャンピオンでもありました。
そして白井義男を支えたお方が、カーン博士。アメリカの生物学者、アルヴィン・カーンであります。
アルヴィン・カーンは「GHQ」の要請で、戦後日本に来ていたのです。
カーン博士はある日、調査研究の帰り、たまたま白井義男のボクシングの練習を観る機会があって。
それ以降、カーン博士は白井義男の素質を見込んで、コーチ兼マネージャーに。そこから徹底的なアメリカ式の食事と練習とを、白井義男に課すのです。1952年の世界チャンピオンも、その賜物であったでしょう。
カーン博士は退職後も、日本に。そのカーン博士の面倒を最後までみたのも、白井義男一家だったと、伝えられています。

ボクシングが出てくる小説に、『陽はまた昇る』があります。ヘミングウェイが、1926年に発表した長篇。原題は、『ザ・サン・オールソ・ライズ』。
日本語訳では『日はまた昇る』とも訳されるようです。ヘミングウェイの、はじめての長篇小説であり、代表作。

「ロバート・コーンはプリンストン大学で、ミドル級のボクシング・チャンピオンであったことがある。」

これが『陽はまた昇る』の書き出し。第一行。つまり、『陽はまた昇る』は、ボクシングからはじまる物語でもあるのですね。
もちろんそれとは別に、友人を誘って、ボクシング観戦に行く場面なども出てきます。

ヘミングウェイの傑作『陽はまた昇る』を読んでおりますと、こんな文章も出てくるのです。

「………反対側にひげ面の太ったフランス兵が軍隊帽をかぶって立っていた。」

及川 進の日本語訳では、軍隊帽に「ケピ」のルビが振ってあります。
「ケピ」kép i はいかにもフランスらしい帽子。もともとは兵士用だったことが窺えるでしょう。
一般には、故き佳き時代の、フランスの警察官の制帽だったものです。低いクラウンに、短い鍔。なかなか美しいものでありました。
どなたか現代版のケピを復活させて頂けませんでしょうか。

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