オートミールとオオ・ド・コロニュー

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オートミールは朝食によく食べますよね。
オートミールの正体は、からす麦、燕麦であります。たいていは牛乳をかけて、スプーンで食べるのが、一般でしょう。
燕麦はスコットランド製が上質なんだそうですね。その昔、スコットランドの大学には、
「オートミール・マンディー」というのがあったらしい。生徒の親が自作のオートミールを持ちこんで。「せめてオートミールを腹いっぱい食べて下さい」の意味だったのでしょう。
これは一例で、スコットランドでいかにオートミールが愛されてきたかが、窺えるというものですね。

「例の如く「オートミール」を第一に食ふ。麦の御粥みた様なもので我輩は大好きだ。」

夏目漱石著『倫敦消息』に、そのように出ています。ロンドン留学中の夏目漱石が、ほぼ毎日オートミールを召し上がっていたのは、まず間違いないでしょう。
夏目漱石は英文学者でもありますから。ここからすぐに、ジョンソン博士の話につなげています。

「燕麦はイングランドでは馬を養い、スコットランド出て人を養う。」

漱石の時代からすでにジョンソン博士の言葉は有名だったものと思われます。
ジョンソン博士の弟子が、スコットランド生まれの、ジェイムズ・ボズウェル。このボズウェルの意見では。

「従って、イングランドでは良い馬が育ち、スコットランドでは良い人間が育つ。」

オートミールが出てくる小説に、『心の河』があります。大正十三年に、宮本百合子が発表した短篇。

「………彼女は急にオゥトミイルが食べたくてしやうがなくなって来たのである。」

これは「さよ」という主人公の想いとして。「さよ」はどうも「平塚」あたりに住んでいて。オートミールを買いに日本橋に出るという展開になっています。
宮本百合子の『心の河』を読んでおりますと、こんな一節も。

「………新しいオー・ド・コローンの瓶を手に取るのを見るのは……………。」

これは夫の「保夫」の様子として。
妻のために、「そろそろ新しいのを買わなくては」と思案している場面。
愛する女性のための、新しいオオ・ド・コロニューを考える男。なかなかよいものであります。

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