ポケットは、服に添えられている「隠し」のことですね。
戦前までの洋服屋は多く「隠し」と呼んだものです。仮に三つ揃い背広だったとして。合計すれば17個前後のポケットがあるという。
でも、時と場合によっては、あえてポケットを省略することも。たとえば、海軍のズボンには、脇ポケットを付けないことになっています。これはなにも日本ばかりではなく、外国の海軍でも脇ポケットがなしがほとんどです。
では、なぜ海軍では脇ポケットを省くのか。姿勢を悪くするので。両手をズボンの脇ポケットに入れると、たちます背中が丸くなる。海軍ではこれを嫌ったがために、脇ポケットを付けろことがなかったのです。
ポケットが出てくる小説に、『蜜柑』があります。大正八年に、芥川龍之介が発表した短篇。
「………今度はポッケットの夕刊を漫然と膝の上へひろげて見た。」
芥川龍之介は、「ポッケット」と書いているのですが。これは、当時の横須賀線の列車の中。主人公は、「二等車」。二等車は今のグリーン車にあたるものです。
でも、『蜜柑』の主人公は、さっきから三等車の小娘の挙動が気になって。なにか様子がおかしいので。
やがて主人公は、小娘の動きを理解する。小娘は三等車の窓を開けたかったのです。やっと、窓を開けることができて。小娘はかねて用意の蜜柑を外に投げる。そこには奉公に出る姉を見送りに弟たちが待っていたので。
ところで大正八年頃、どうして横須賀に用事があったのか。横須賀の海軍学校で、英語の先生をしていたのです。
大正九年に、芥川龍之介が発表した名作に、『舞踏會』があります。もちろん、明治期の鹿鳴館を背景にした物語。このなかに。
「その後又ポルカやマズユルカを踊つてから、明子はこの佛蘭西の海軍将校と腕を組んで……………。」
この場合の「ポルカ」が、ダンスのポルカであるのは、いうまでもないでしょう。
「ポルカ・ドット」は、踊りのポルカからうまれているのではないかと、考えています。ポルカのための衣裳が大きく開いて。それを上から眺めた時の様子ではないでしょうか。
どなたかポルカ・ドットの、チョッキを仕立てて頂けませんでしょうか。