ブラインドは、目隠しのことですよね。日除けでもあり、窓覆いでもあります。
日本に昔からある簾もまた、広く解釈すれば、ブラインドのひとつということになるでしょうか。簾は風を入れて、日を遮る効果を持っています。
ブラインドの一種に、ヴェネッシャン・ブラインドがあります。横段の細長い板。これを調整することで、光の量も調整できるようになっているものです。
「………音のしないようにブラインドを卸して、また無言の儘出て行った。」
夏目漱石が、1916年に発表した『明暗』に、そのような一節が出てきます。これは、部屋に案内してくれた書生の仕種として。
漱石の時代にもブラインドはあったし、「ブラインド」の言葉も用いられていたものと思われます。
ブラインドが出てくる小説に、『ダロウエイ夫人』があります。1925年に、英国の作家、ヴァージニア・ウルフが発表した物語。
「そして車がブラインドをおろしたまま、人が歩くような速度で通り過ぎてゆくあいだ、日差しをあびて花屋のそばに立つ彼女は………」
これは、女王陛下がお乗りになっている馬車のこと。もちろん、馬車にブラインドがついているのでしょう。
ヴァージニア・ウルフの『ダロウエイ夫人』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。
「………燕尾服を着て、ボタン穴にカーネーションを挿した、しゃちこばった男………」
これは、あるパーティーでの様子として。
ヴァージニア・ウルフは、「カーネーション」と書いていますが、いうまでもなく、「ブートニエール」でしょう。それも白のカーネーションを。
燕尾服には、白のカーネーション、ディナー・ジャケットには赤のカーネーションがふさわしいものと考えられていますので。
どなたか赤のカーネーションが似合うスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。