トマトは赤い野菜ですよね。トマトの応用範囲は、とても広い。
トマト、キューリ、チーズを挟んだだけでも、立派なサンドイッチになってくれます。
また、パスタにもトマトは欠かせないでしょう。トマト、ニンニク、唐辛子。これを適度に炒めますと、美味しいソースの完成です。
いざやわれ、倶楽部にゆき、友をたづね、
紅のトマト切り、ウイスキイの酒や呼ばむ。
北原白秋が、1911年に発表した詩集『思ひ出』に、そんな一節が出てきます。
北原白秋はトマトにウイスキイを添えたのでしょうか。
「その頃トマトのことを西洋赤茄子などと称えてゐました。」
昭和十三年に、斎藤茂吉が書いた随筆『赤いトマト』に、そんな文章が出てきます。
斎藤茂吉は、1882年、山形のお生まれ。その茂吉が七歳くらいの時、東京からトマトの種を取り寄せて、育てたことがあるんだそうですね。
でも、そのトマトはあまりに西洋くさくて、食べられなかった、そうも書いています。
トマトが出てくる短篇に、『外科医』があるのですが。1980年頃に、英国の作家、ロアルド・ダールが発表した物語。
「………ミルク、卵、バター、トマト、レタス………」
これは外科医のロバート・サンディが、自他の冷蔵庫を点検している場面として。
また、『外科医』には、こんな描写も出てきます。
「………今こうしてツイードの古ぼけたジャケットのポケットに五十万ドル以上するダイアモンドを入れて、オックスフォードの通りを自転車で走っているとは!」
もちろん、ロバート・サンディの様子なんですね。
「古ぼけた」。イギリス人がトゥツイードについて語る時、なぜか「古ぼけた」とか、「着古した」とかの形容詞がつくのか。
まるで「古ぼけた」は、トゥツイードの枕詞みたいなんです。
トゥツイードの上着は、着込んだ時にこそ魅力を放つのでしょうか。
要するに、トゥツイードはそのくらい丈夫で、上質なんだと考えているのではないでしょうか。少なくとも英国人はトゥツイードに対して信仰心を持っているようです。
どなたか古びてこそ美しいトゥツイードの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。