エアコンは、空調のことですよね。正しくは、「エア・コンディショナー」でしょうか。
日本語にも「空気調節」の言い方があるようです。エアコンの前には、冷房とか暖房と言ったのでしょう。
エアコンの仕組はよく分かりませんが。夏に涼しく、冬暖かいのは、心地良いものです。
ことに近代のマンションは、窓を開けないで暮らすのが建前で、どうしてもエアコンが必要になってきます。
一方、エアコン無しがご自慢だったのが、名随筆家、山本夏彦。事実、『冷暖房なし』の随筆集があります。
山本夏彦は随筆家のかたわら、出版社の社長でもありまして。虎ノ門に編集部がありました。この事務所には、エアコンがない。それが山本夏彦の心意気だったようです。
「夫はそれを不順な気候と不備な空気調節のせいにしたが………」
1969年に、加賀乙彦が発表した短篇『最後の旅』に、そのような文章が出てきます。
加賀乙彦は、「空気調節」と書いています。これは病院に入院している「夫」を看る「妻」の印象として。ここでの「それ」とは、夫の夏痩せなんですが。
エアコンディショナーが出てくるミステリに、『スパイよさらば』があります。1980年に、ブライアン・フリーマントルが発表した長篇。
「パリのアメリカ大使館の奥の、エアコンディショナーのきいたCIAの静かな一室で、ハートマンは何とかこの任務を辞退しよう、と逃げを打った。」
フーゴ・ハートマンは、二重スパイという設定になっているのですが。
また、『スパイよさらば』には、こんな描写も出てきます。
「洗濯屋から戻ったワイシャツの伝票にはエクストラ・スターチ”と注記されていた。」
このシャツも、もちろんハートマンの持ち物。「エクストラ・スターチ」は、固い糊つけのこと。
シャツの糊をどうするのか。これまた、好みの問題でしょう。
でも、ボタン・ダウンのシャツに、エクストラ・スターチは少ないでしょう。同じように、ウイング・カラーをエクストラ・スターチにしないのも、珍しい。
エクストラ・スターチは、シャツのクラシック程度と関係があります。
クラシックなシャツには、エクストラ・スターチがよく似合うものです。
どなたかクラシックなシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。”