シャンパンは、三鞭酒のことですよね。シャンパンはその昔、「三鞭酒」の宛字があったらしい。音が似ているので、「三鞭酒」。
シャンパンにもいくつかの壜の大きさがあります。大があって、中があって、小があって。
シャンパンの小壜。シャンパンの小壜が自宅の冷蔵庫に入っていると、つい飲んでしまうものです。
フル・ボトルなら、「今度、みんながいるときに開けよう」となるのですが。小壜だとその抑止力が働いてくれないのですね。
シャンパンの小壜。よろしいんだか、よろしくないんだか。
シャンパンのお詳しかったお方に、マンがいます。ドイツの偉大な作家、トオマス・マン。
トオマス・マンは1875年6月6日。ドイツのリューベックに生まれています。お父さんは、トオマス・ヨハン・ハインリッヒ・マン。
このハインリッヒ・マンはリューベックで手広く商売を行っていて。その中のひとつにシャンパン醸造があったのです。
ハインリッヒのシャンパンは、シャンパン方式で、家庭内でも「シャンパン」と呼んでいたらしい。第一、家での日常会話の多くはフランス語でもあったそうですね。
まあ、そんなわけで、トオマス・マンは幼い頃から、シャンパンの近くで育ったことは間違いないでしょう。
トオマス・マンの小説を読んでおりますとさりげなくシャンパンのことが出てくるのも、当然なのでしょう。
たとえば、マンの小説『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』に、こんな一節が出てきます。
「………専門的にはコアフュールと呼ぶあの仕上げの美装を非常に重く見ていたことだけは確かである。」
これはシャンパン・ボトルの装飾について。たしかにシャンパンは稀少であればあるほど、美しい装飾で彩られるものです。
その装飾のことを、「コアフュール」。
これはたぶん「コワフュール」のことかと思われます。
「美装」。「結髪」、「美容」。
なるほど、シャンパン・ボトルを女の人にたとえるなら、「コワフュール」。言い得て妙であります。
マンの『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。
「そのほかには胸の部分に糊付けした贅沢なシャツが六着はいっていたが………」
これは若きクルルが、巴里に行くための用意として。
おそらくシャツの胸のプラストロンのことかと思われます。
二十世紀はじめには、昼間でもぷラストトロン付きのシャツがあったのでしょう。
どなたかプラストロン付きのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。