ビショップは、「僧上」のことですよね。つまり、偉いお坊さんのこと。
「ビショップ」 bishop と書くんだそうですが。ビショップで、ミステリでと申しますと。『ザ・ビショップ・マーダー・ケース』を思い出すことでしょう。
1929年に、ヴァン・ダインが発表した物語。日本語訳は、『僧上殺人事件』となっています。もちろん、名探偵、ファイロ・ヴァンスが活躍する内容です。
「明るいグレーのフランネル地の二つ揃いのスポーツ服を着て、薄青色の絹のシャツをつけ、厚いゴム底で、タン色をしたオクスフォード型の靴をはいていた。帽子は ー 真珠色のフェルトのフェドーラで………」
これは「J・C・ロビン」の着こなしとして。1920年代には、フェドーラが流行したものと思われます。
ビショップはまた、チェス用語でもあります。チェスの駒のひとつ。「僧上」の形の駒なので、「ビショップ」。
このチェスのビショップが出てくる小説に、『チェス奇譚』があります。1990年に、シュテファン・ツヴァイクが発表した短篇。
「人間を夢に見るときには、ビショップとかルークの動き、ナイト跳びで進んだり戻ったりする動きでしか見られなくなりました。」
これは物語の主人公、チェス・プレイヤーの告白として。
また、『チェス奇譚』には、こんな描写も出てきます。
「いかめしくブラックスーツに身を包み、豪華なネクタイに少々しつこい真珠のピンを付け………」
これは「チェントヴィッチ」というチェス・プレイヤーの着こなし。
パールのネクタイ・ピンなんですね。十九世紀の紳士はたいてい「ピン」を愛用したものです。ネクタイへの装飾でもありますが、ネクタイの結び目を上に上げておく機能もあったのでしょう。
どなたか十九世紀ふうのピンを作って頂けませんでしょうか。