サイドテーブルは、小机のことですよね。また、脇机でもあるでしょうか。
たとえば、寝室の側に置いてあったり。飲みかけの寝酒を座らせておくにも便利なものであります。
アメリカのミステリを読んでおりますと、よく「コーヒーテーブル」が出てきます。あのコーヒーテーブルも実際には一種のサイドテーブルなんでしょうね。もちろんコーヒーカップを置いておくのに好都合ということなんでしょうが。
サイドテーブルが出てくる小説に、『黒い蝶』があります。井上 靖が、昭和三十年に、発表した短篇。物語の時代背景は、昭和二十八年頃かと思われます。
「枕もとのサイド・テーブルの上の大きな壺には薔薇の花が溢れるほどたくさん活けてある。」
これはある病室での光景として。それは高級ホテルの一室のような豪華な病室だと設定されています。
主人公は、「三田村」という男。三田村が有楽町のとあるレストランで食事していると、突然、見知らぬ男に話しかけられて。
「病院に一緒に行ってほしい」と。その男の服装は。
「品のいい細縞のはいっている紺のウーステッドをきちんと身につけて、胸ポケットからは、薄い同色のハンカチを覗かせている。」
実は彼の娘が入院していて、なにか言葉を発するのだけれど、言葉がわからない。それを聴いて欲しい、と。
それで、三田村は、レストランに近い病院へ。
少女の名前は、江藤良里子。ヴァイオリニスト。
「ムラビヨフ」。
少女の口からでるのは、ただその言葉だけ。
このたった一言から、三田村が活躍することになるのですが。
サイドテーブルが出てくる小説に、『レベッカ』があります。1938年に、ダフネ・デュ・モーリアが発表した物語。
余談ではありますが、ダフネのおじいちゃんが書いた小説が、『トリルビイ』なんですね。この小説が演劇になり、この演劇から帽子の「トリルビイ」が生まれたこと、ご存じの通り。
「………サイドテーブルに積もった白粉、香水とリキッドルージュの染み………」
これは自分で自分の部屋を眺めている場面として。
また、『レベッカ』には、こんな描写も出てきます。
「ベンがぎくしゃくした足取りで入ってきた。サウウエスターを手にしている。」
「サウウエスター」southwest er は、「嵐よけ帽」のこと。多く防水地で作られ、ブリムの後が極端に広くなったスタイルのこと。
ごく一般の発音は、「サウスウエスター」。でも、海の男は、「サウウエスター」と発音するんだとか。
どなたかサウウエスター式のタウン・ハットを作って頂けませんでしょうか。