スペインで忘れてならないものに、リオハがあります。
スペイン産のワイン。「リオハ」は、原産地呼称で認められていますから、勝手のリオハの名前を使うことはできません。
昭和三年に、マドリッドでリオハを飲んだ日本人に、浜田青陵がいます。その時の紀行文は、『西斑牙の旅』に収められているのですが。
「食品を黒く古びた土焼に入れて来るのも面白く、スペインの葡萄酒「リオハ」の杯を傾くれば、陶然として南欧の気分に酔ってしまう。」
これは1602年創業の「バチン」というレストランでのこと。
リオハではなく、水を飲んだのが、川島理一郎。大正四年に。
「しかしこの一見平凡な壺には水を冷すための特殊な焼きが工夫されてある。」
川島理一郎著『スペインの水壺』に、そのように出ています。
素焼きの壺なので、水は壺の表面に沁みでる。沁みでた水は蒸発して、気化熱を。この気化熱が壺の中の水を冷す仕組みになっていたわけです。
川島理一郎は、パリ時代の藤田嗣治と親友だった画家。
スペインが出てくる小説に、『人間の絆』があります。
1915年に、サマセット・モオムが発表した自伝的創作。
「今ではスペインの精神、スペインのロマンや色彩や歴史や栄光などが、彼の肉体の一部にさえなっていた。」
事実、モオムは1897年に、スペインを旅して以来、何度もスペインに足を運んでいます。
また、『人間の絆』には、こんな描写も出てきます。
「コートを脱ぐと、スクエアネックの淡いブルーのドレスがあらわれた。」
これは主人公が、「ミルドレッド」という女性と食事する場面でのこと。
スクエア・ネック。いいですねえ。
どなたかスクエア・ネックの白麻のスェーターを編んで頂けませんでしょうか。