シチリアと真紅

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シチリアは、イタリアの地名ですよね。昔はよく、「シシリー」と言ったものですが。
シチリアは島で、地中海でいちばん大きい島なんだとか。ちょっとおむすびの形をした島。そのためなのかどうなのか、美味しいものがたくさんある島でもあります。
最近ますます、シチリア・ワインの人気が高まっているのもそのひとつ。オリイヴ・オイルも高品質であります。
大正十四年に、シチリアを旅した日本人に、安倍能成がいます。安倍能成は、明治十六年のお生まれ。哲学者。夏目漱石の弟子でもあったお方です。
安倍能成はパレルモに着いて、まずは博物館を訪ねています。

「………両翼に聖カタリナと聖ドロテアとを配した紅衣の聖母の絵が印象に残った。」

安倍能成の紀行文『シチリアの旅』に、そのように出ています。これは大正十四年一月十六日の記録として。
1988年に、シチリアを訪れた作家に、辻 邦生がいます。その時の紀行文は、『美しい夏の行方』に収められているのですが。

「そこでカプチーノにクロワッサンという簡単な朝食を、立ち机の並ぶ空港のレストランでとることに する。」

この後、すぐに続けて、パリのクロワッサンとパレルモのクロワッサンとがいかに異なっているのか、詳しく書いてもいます。

シチリアが出てくる論文に、『ニコラ・プッサンの謎』があります。井上究一郎の、フランス文学研究書。

「こんどはじめてモーパッサンの紀行『シチリア』を読んで………」

この文章の中に、ルノワールの話も出てきます。それは、1882年1月15日のこと。
作曲家のワグナーがパレルモにいることを知ったルノワールはすぐにパレルモに。ごく短い時間にワグナーの肖像画を描いたそうです。
井上究一郎の論文には、『ガリマールの家』もあります。この中に、当時「フェミナ賞」の審査委員長を勤めていた、シモーヌ夫人のことが出てきます。

「………帽子の羽根から靴の先まで全身真紅のシモーヌ夫人で………」

「全身真紅」。お美事という外ありません。
どなたか真紅のスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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